文具で楽しいひととき
ぷんぷく堂
あなたの小道具箱
「あなたの小道具箱」の「あなた」という言葉に、私は反応してしまった。「小道具箱」という名前だけだったら、私のアンテナはそれほど反応しなかったかもしれない。道具を入れるということで言えば、ペンケースは持っているし、付せん専用のストックボックスだってある。おおかたの道具類はそれぞれ適切な場所にしまわれている。ということもあり、「道具箱」だったら、きっとすんなりと素通りできていたと思う。
でも「あなたの」となると話しは別だ。不思議なもので機能から文具を見ると、同じ類のものはすでに持っているから今はいいやとなるが、感情面に忍び込まれると、こちらも油断が出来てしまう。次の瞬間私は、「どの色にしようかな」と考え始めていた。ぷんぷく堂の櫻井さんの巧妙な作戦にまんまとはめられてしまった。
■ かわいい名前とは裏腹に大人な作り込み
サイズは、A6とかB6といったものではない。中に入れるものから考えて割り出されている。たとえば、ハガキがすんなり入ったり、ペンも余裕しゃくしゃく入る。こうした物を入れた時になるほどちゃんと考えられていているなと思うのは、取り出す時に指先が入るスペースもちゃんと確保されているところだ。これは「保存箱」ではなく「道具箱」である。そう銘打っているだけあって、物を入れっぱなしにはせず、頻繁に出したりしまったりするための機能的な大きさになっているのだ。言わば、行動から編み出されたサイズ。
素材は、紙製。箱の表面に指先を優しく添え滑らせてみると、たしかに紙独特のこまかな繊維が指紋を通じて伝わってくる。次に、その指先をグイと押し込んでみる。すると、ほんの数ミリだけ凹むがビクともしない。紙とは思えない硬さだ。これは「パスコ」と呼ばれる硬質パルプで作られている。「パスコ」を調べてみると、収納ボックスやちょっと変わったところでは溶接のマスクなんかにも使われているらしい。
この頑丈な素材で作られている小道具箱、およそ50年は持つという。私は今49才なので、99才くらいまではいけるという計算だ。果たしてそこまで私の方が見届けられるかはかなり微妙だ。
■ 音も楽しめる
箱のフチには、50年しっかりと持たせるという意気込みが感じられるメタルでグルリと補強がされている。これがいい音を奏でてくれる。開ける時はそれほどでもないが、閉める時にメタルどうしが触れあい、パカリ、、という音がする。文具が奏でる音と言えば、万年筆のキャップを尻軸にさす時の「カプリ、、」という音がある。私はあの音が好きで、万年筆による微妙な違いを楽しんでいる。私が一番好きなカプリ音は、ペリカンM800だ。この小道具箱も独特な音が楽しめる。
■ 私の使い方
私はメモ用紙入れとして使っている。ハガキサイズの綴じられていない単一のメモを色々な種類入れている。朝、事務所にやってくると、リュックから書類入れのリーガルエンベロープやスケッチブック、手帳や万年筆ケースを次々に出して、それらをデスクの所定の位置にセットして、私が理想とするコックピットを作っていく。その仕上げに本棚に置いてあるこの「私の小道具箱」を開け、今日一日を共に過ごすメモ用紙を一枚だけ選び出す。それを手帳の前にそっと置く。このメモには、今日仕事をしていく中で新たに発生するToDoを書いていく。以前はふせんでやっていたものを、すこし厚手のハガキサイズの紙に書いてみると、メモという行為がとっても上質な作業になった。この小道具箱から取り出すというのが加わって、メモを心で味わう上質さがより一層増した。
固定用のゴムバンドが付いている。
*ぷんぷく堂 あなたの小道具箱 2,400円+Tax
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