文具で楽しいひととき
マルアイ
奉書巻紙
ノートは1ページを書き終わると新しいページをめくらなければならない。当たり前のようにこれまでそうして生きてきた。しかし、書いたものをあとで見る時に、ひとつのテーマの記述をページをめくっていくのは少々見づらい。
ページをめくりめくりして見るというのは、ページごとにバラバラになった情報を目から入れて、それらを頭の中でカチッと組み合わせている、というような作業が必要になる。もし記述したものをページをめくらずとも、いっぺんに目から全てを入れることができれば、頭で組み合わせることなくひとつのイメージとして頭の中にすんなりと入れることができる。そうすれば「考える」という作業がさぞかしスムーズになることだろう。
そのためにはページをめくらなくても、書いたもを一望できるツールが必要になる。その観点でペーパープロダクトを色々と探してみると、ありましたありました、いいものが。しかも2つも見つかった。
■ マルアイ「奉書巻紙(ほうしょまきがみ)」
私は「奉書巻紙」というものを初めて知った。調べてみると、あ〜あれだったのかと以前になんども見かけたことがあるものだった。よく祝辞を読む人が壇上でおもむろにスーツの内ポケットから細長い紙を出して折り返しながら読んでいるが、それのもとのなっている紙が「奉書巻紙」だったのだ。
ご覧のようにもともとはロール状になっている。ここに書いていき、書き終わったものは専用の台紙で蛇腹状に折って最後を切っていくらしい。私は、このロール状の紙というところに惹かれた。ロールの紙なら好きなだけ書いていける。
ページをめくらずに書ける紙はなにかないだろうかと考えている時に、実はひとつのヒントとなる記憶があった。ずいぶん前に設計家の方がロール状のトレーシングペーパーを使っているのを見たことがある。図面の上にそのロール状のトレペをゴロゴロと広げてその上に図面の変更点などを書き込んでいた。そのトレペのロール紙はかなり大きなものだったので、今回の私の用途には合わないものだった。ロール状の紙は他にないだろうかとネットで検索している中で「奉書巻紙」に出会った。
この「奉書巻紙」は、机の上でも扱いやすいコンパクトサイズ。紙の幅は、私が日頃使っている月光荘のスケッチブック 2Fとほぼ同じくらい。A5サイズの長い方とも大体同じ程度だ。ちなみにロールの長さは5.2mもある。
紙は表裏性がハッキリとあり、たぶん裏側だと思うがそちらはかなりザラザラしている。表面はそのザラザラを4割くらい抑えられている。ツルツルとまではいかないが、多少の平滑性がある。紙自体にはコシがあり、やや厚めの半紙といった印象だ。平滑性のある方に書いてく。
本来はロールを左に置いて書いてくようだが、私は逆に右に置く。横書きしていくにはその方がいいのだ。鉛筆やシャープペンでの書き味はまずまず。書き心地がよいとは言い難いが十分書いていける。本来は筆で書いてくものだから致し方ない。
書いて、というか消してみて気になることがあった。消しゴムがうまくすべってくれないのだ。紙の表面には毛羽立ちがあるようで、消しゴムが黒鉛を吸い付けるよりも毛の方を先に吸い付けてしまう。どうやら消さずにひたすら書いていくのがよさそうだ。ちょっとクセのある毛羽立ちのある紙なので、ボールペンや万年筆は使わないことにした。
とは言え、どんどん紙面を伸ばしていけるので、思う存分キーワードや図、工程表などを書き続けられる。ロールを転がしながら書いていると巻物を書いているようで新鮮だ。ちなみに、よ〜く見ないと気づかないレベルだが、この巻紙は定期的につなぎ合わせの部分がある。
気が済むまで書いていったら、切り取って壁などに貼って全体像を一望する。いくらページをめくらなくてもいいとは言ってもあまりに長くしない方がいい。と言うのも長すぎて視線を左から右にずらさなくてはいけなくなり、それはそれで別のイメージを頭で結合することになってしまうので。
半紙状のものでなくて普通紙でこうしたロール紙があってもよいのではと思った。
■ 山櫻「アコーディオンノート」
もうひとつは、ノートスタイルのアイテム。こちらもひたすら書いていける。先ほどはロール状だったが、これはアコーディオンのように蛇腹状に折りたたまれている。携帯性、そして外でさっと書くという点ではこちらの方が便利だ。サイズはA5で48枚の紙が折りたたまれている。それぞれの折り目にはミシン目がありピリピリと切り取れる。
こちらは筆記用紙のようなので、どんなペンでもふつうに書いていける。書き方は表紙を開いて1ページ目には書かずにそれをめくった裏面の2ページ目からはじめる。あとはいつものノートのように次のページ、さらに次のページと進んでいく。そうして書いていき、書き終わったところでアコーディオンをパッと広げると書いたものがひとつながりになり、私の希望する一望の状態が味わえる。
折り目にはミシン目があると言ったが、必ずしも切り取らなくてもいい。ミシン目は折り目をキチッとするという役割もあるようだ。切らずに使えば、さすがに全てを一望はしにくくなるが、自分の「思考の流れ」というものが眺められる。
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デジタルは膨大なデータを入れておくことができるが、それらを見るためには使っているPCだったり、スマホやタブレットといったあくまでも画面サイズの中でとなる。一方、アナログの紙は今回のように広げれば一望できてしまう。これはアナログのひとつの強みと言えそうだ。頭の中で別々な像を結ばず全体のイメージをそのまま頭に入れることができる今回のツール。考える作業のひとつの手法として取り入れると、新たな発想に繋がるかもしれない。
* マルアイ 奉書巻紙
* 山櫻 アコーディオンノート
関連リンク
「考える場としてのノート」
「発想に弾みがつくノート」マークスアイデアノート・エディット
「いつもと違う紙に書く」GMUNDノート
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