文具で楽しいひととき
アシュフォード
バイブル ディアキップレザー
かつてシステム手帳を使っていた頃、結局のところ使いこなせず挫折したという苦い経験がある。
システム手帳の良さは、なんと言っても好きなリフィルをセットして自由にカスタマイズできる点にある。当時の私は、この自由にカスタマイズを拡大解釈して、あれもこれもと詰め込みすぎてしまい、使いこなすどころかシステム手帳に操られていたという感じだった。
そうした経験を踏まえ、今あらためてシステム手帳と向き合い自分のワークスタイルの中に組み入れて、それなりに使えるようになった。その最大のポイントは、システム手帳を「多機能」ではなく、「単機能」ツールとして付き合ってみたことだ。「多機能」ツールとして付き合っていた時は手強かったけど「単機能」ツールとして接してみると案外付き合いやすいじゃん、と思えるようになった。
■ システム手帳をノートのように付き合う
システム手帳というと、スケジュールリフィルが豊富に揃っているので、ついついスケジュール管理をしてしまいがちだ。その考え方も基本的にとっぱらってみた。
では、何に使うのか。単なる手帳として付き合ってみる。私が現在使っている用途は、出張手帳、取材手帳、このふたつ。出張手帳も取材手帳も基本は無地や罫線のリフィルを綴じ込んで色々なことをメモするのがメイン。
それに加えて、出張の時は訪問先の住所などの情報やホテルやフライトスケジュールなどの諸々の情報も綴じ込んでいる。上海出張の時には、前回行っておいしかったレストランの情報や、よく使う中国語会話集(自作)ページなど、以前のリフィルから必要なものを取り出して綴じ込んだりもする。
こうしてみると、結局のところ多機能として使っている。しかし、スタートが違う。はじめから多機能として考えるのではなく、あくまで単機能手帳として向き合い、そこに本当に必要なものだけを付け加えていくというものだ似ているようだが、これはかなり違う。
■ 扱いやすいバイブルサイズ
現在使っているシステム手帳のサイズはバイブルサイズ。システム手帳の代表的なサイズだ。にしては、このカバーは結構小さめ。私の手の平に手帳をおくと、指先が手帳からはみ出てギュッと握ることもできる、それくらいの大きさだ。
実際にコンパクトだが、コンパクトに見せている工夫もある。たとえば、システム手帳でよく見かける表紙の留め具がない。私は、この点をとても気に入っている。
私の用途は、机の上で手帳を開いて書き込むということはまずなく、立ったまま使うことの方が圧倒的に多い。たとえば、展示会場でブース取材をしているときだったり、移動中の電車の中でガタゴトと大きく揺られながら書き込むということもある。いちいち留め具を外している暇など私にはない。
すぐさま新しいページを開き、書き出したい私は紐状の栞をつけている。これはかなり以前に無印で買ったものだ。システム手帳に紐のしおりというのは見た目としてはかなり違和感があるが、使い勝手はすこぶるいい。
■ ラミーcp1がよく似合う
さらには、このシステム手帳にはペンホルダーもない。留め具はないのは、すぐ開けるという点でいいが、ペンホルダーがないというのは少々困る。しかし、ペンをセットできる場所はちゃんと用意されている。表紙を開くと左側に大きなポケットがある。
本来は書類やチケットなどを入れておくところだが、ここにペンをセットしておける。私は、ラミー cp1のシャープペン 0.7mmをこのシステム手帳に合わせている。cp1をさしても手帳からペンは全くはみ出さない。
このポケットはcp1のために作られたのではないだろうかと思うほどサイズもピッタリ。シンプルこの上ないシステム手帳にミニマリズムなcp1が実によく合っている。
■ 潔いワンポケット
ちなみに反対側にもポケットが付いている。こちらも大きなワンポケット。
小分けされたポケットは一見便利そうだが、サイズが合わないと入れられないこともある。そういう点で大きなワンポケットの方が、実は一番フレキシブルに使える。大きなワンポケットスタイルは、徹底されていて、裏表紙にもある。ここには、すぐに取り出したい名刺などを忍ばせておくのに最適だ。
■コンパクトサイズにあわせてリングもかなり小さめの11mm
単機能な手帳として付き合っていくことを考えれば、かえってこれくらいのリング経の方がむしろちょうどいい。リング径が大きいとついついあれもこれもと色々なリフィルを入れてしまいかねないので。私は、日頃リフィルを20枚そこそこくらいにして軽量・コンパクトを心がけている。
そうは言っても入れようと思えば、70枚くらいは収めておける懐の深さはある。
■ はじめからソフトな牛革
カバーに使われているのは、キップと呼ばれる牛革。
これがとてもやわらかい。システム手帳のカバーと言うと、ガチッとしたものが多い中、これはふんわりとしたやわらかさがある。表面はサラサラとして、少し強く握るとわずかにクッションのように凹む感触もある。手が喜ぶ革である。ちなみに、以前紹介した「IDEA piece」もこれと同じ革を使っている。
使い込むほどにサラサラとした革にはだんだんと艶やかさが生まれてくる。育てがいがある。このソフトなカバーは、手触りだけでなく、実用面のメリットもある。見開き性がすこぶるいいのだ。
新品の時からすでにやわらかさに富んでおり、はじめから見開き性の良さがしっかりと味わえる。手の平の上で開いても、完全に180°フラットに開く。
システム手帳の多くは硬めな革を使っているせいか、フラットにするには上から少々押さえつけなくてはならないものもある。これはその必要が全くない。外で使うことが多い私にとって、これははずせないポイントである。せっかくフラットに開いたのだから紙面もフラットにしたい。
先ほども触れたが、カバーの両方の内側にはポケットが付いている。これが、書く時の紙面の段差を生んでしまう。そこで、ちょうど本の見返しページのような感じで、ちょっと厚めのケント紙に6穴パンチで穴をあけて一番最初と最後に綴じ込んで使っている。
言わば下敷きだ。
■ システム手帳と気軽に向き合う
「システム手帳」というと、その名前からしてなにやら自らちゃんとした「システム」を作って使わなければならないというプレッシャーがのしかかってくる気がする。それをリングの付いた手帳というくらいに考えると、ぐっと身近に感じられる。あまり名前にとらわれることなく使ってみることも必要なんだと思う。
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