文具で楽しいひととき
morinagaFO.
思考用紙
本、「文具上手」の取材でポスタルコのマイクさんはこんな話をしてくれた。
デザインを考えるとき、同じペン、紙ばかりを使わずにできるだけ色々なものを使うようにしている、と。その理由はいつもと違う書き味を無理やり作り出すことで「癖を溶かす」ためだという。
いつも同じペンと紙ばかり使っていると自分の内側に降り積もった「癖」が知らず知らずのうちに出てきて考えが単一的になってしまうのだそうだ。
この話を聞いてなるほどと思った。普段何気なく使っている道具に私たちは結構大きな影響を受けている。使いやすい自分のお気に入りの道具を持つことは、それはそれで大事だが、あまりそれに偏り過ぎるのもいけない。
たまには違う道具で自分自身に刺激を与えてみるのもいいのだろう。そういう意味でこの「思考用紙」は自分の頭のスイッチをカチッと切り替えるくらいのインパクトがあった。
■ 思考を溶かしてくれる罫線
「思考用紙」には、 A4サイズと A5サイズの2種類がある。
満寿屋製のクリーム紙を使った紙面は大きな方眼になっている。
いや、これは方眼というべきではないのかもしれない。方眼というと、どうしても5mm や10mm くらいの小さいマス目のイメージがある。これは A4サイズだとひとマスが35mm もある。
小さめの付箋くらいの大きさだ。1枚の紙面にこの大きなマス目が8×6個も並んでいる。これはちょっと見たことのない紙面だ。「癖を溶かす」という意味では、このフォーマットは大いに新鮮味がある。
■「用紙」とあるように綴じられていない
この「思考用紙」、一枚一枚の紙は綴じられてなくバラバラ。その一枚をハラリととって机の上に置いてみる。
束になっている時にもマス目の罫線はやや薄めだったが、一枚になるとさらに大人しくなる。罫線はノートの主役ではない。主役はベースとなる紙そのもので、その主役をより使いやすくするためのサポート的位置付けが罫線だと私は思っている。
この薄さはその点でちょうど良い気がする。
■ この大きなマス目を前にして何を書くべきか
私の頭のいつも使っていないところがややとまどいつつも一生懸命に動き出しているのを感じる。一つのマス目に一文字を書いてみるか。いやいや、それでは文字が大きすぎてしまう。これまでの横罫線時代では、常に罫線と罫線の間に文字を書いて育ってきたので、ついついまた同じことをしようとしてしまった。
その癖を溶かさねば…。なんとなく3~4マスくらいの中に書いてみる。キーワードみたいなものを書いたら、外枠を囲んでいる自分がいた。次にそのキーワード同士を線でつなぎ始めた。
誰かにそうしなさいと、言われた訳でもないのに大きなマス目に向かったら、この作業を自然に行っていた。この大きなマス目は、キーワード思考にさせてくれる力があるようだ。「思考用紙」を縦にしたらやはりキーワードを書くのだが、こんどは構成を考えるのに役立った。
こうしてキーワードの外枠を囲む時、必ずしもマス目に完全に沿っている訳ではない。左側と上もしくは下の線ぐらいはマス目沿いに線を引くが、それ以外の線は、マス目とは関係ないところに引いていた。5mm方眼で線を引くとき、どうしてもアミ目状になっているので、その線の上をなぞることが多かった。
そもそもたくさんある方眼線のアミ目をかいくぐって線を引くというのは難しいし、なんだか不自然だ。つまり、どうしても方眼の線に縛られてしまいがちな面があった。その点でこの大きなマス目は線を使いたければ使えば・・・というおおらかさがある。このゆるやかな線を頼りにごくごく簡単な図を描くこともできる。
フリーハンドで図を描くとなるとちょっと荷が重いものがある。だけど、たとえば四角を描くときはじめの縦線と次に書く横線だけマス目の線をなぞれば、あとはガイドがなくても勢いにのって結構キレイな四角が描くことができる。この「思考用紙」には最初だけガイドをしてくれてあとは自由にできるという、たとえるなら、自転車の補助輪を外して練習する時の最初だけ後ろから押してくれる「お父さん的」見守り感がある。
こうしたこともこの大きなマス目の力なのかもしれない。
■ いつも違う思考モードに
何かを考えようとした時、特に初期の段階では文章よりもキーワード的なものをどんどんとあげていく方がいい場合がある。そんな時には、いつものノートを一旦横に置いてこの「思考用紙」とペンだけで取り組んでみる。
きっと、いつも使っていない脳がいっちょ頑張ってみるかと働き始めてくれそうな気がする。
「思考用紙」は、文具Shopプラーナさんで販売されています。
ポスタルコ マイクさんをはじめ、12名の文具術を紹介した「文具上手」
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