2013.04.08(extra)

「ロングセラーなメモ」

ミドリ

ダイヤメモ

ミドリ ダイヤメモ

日本製メモ帳と言えば、きっと多くの方がこのミドリダイヤメモを思い浮かべるのではないだろうか。それもそのはず、このダイヤメモは1961年の発売以来、50年もメモ帳の定番として君臨している。当たり前のようにどこにでもある存在でありながら、これまであまり語られる事のなかったこのダイヤメモ。その魅力をひとつじっくりと掘り下げてみたい。

まず、この「ダイヤメモ」というネーミングの由来から。これはミドリ(現在のデザインフィル)の当時の社長の会田正昭氏が名付け役。名前のアイダを下から読んでダイア、ダイヤモンドにかけてダイヤメモになったという嘘のような本当の話。

■ 胸ポケットから割り出されたサイズ

そのダイヤメモが誕生した1960年当時は、折しも高度経済成長のまっただ中。ダイヤメモは、こうした中で日々働いているビジネスマンにとって使いやすいというコンセプトのもと生まれた。しかし、その頃このようなメモ帳はまだなかった。

つまりお手本になるものはなく、全くゼロから作らねばならなかった。そこで、サイズ、カバー、紙面など吟味して作られていった。ダイヤメモには今回のMサイズ以外にSとLもある。中でも定番はMサイズ。このサイズの選定にあたっては、当時ビジネスマンが着ていたYシャツをたくさん買い込んできて、そのポケットのサイズを徹底的に採寸したと言う。

そして、一番おさまりがよいサイズとしてこのサイズに行き着いたのだ。実際にポケットに入れてみると、確かにスッポリと収まる。ポケットに対してダイヤメモのほうがやや細身なのは、きっとペンを差すためのスペースを確保したためではないかと思われる。

このサイズは後のメモのスタンダードになっていく。また、表紙には紙ではなくポリプロピレンを使っている。

ミドリ ダイヤメモ

これは、汗水垂らして仕事をしても、中の大切なメモが濡れてしまわないようにということと、もうひとつ重要な機能がある。それは、中のメモをめくりやすくするため。それまでのメモは、書いては切り取っていく使い方だったが、このダイヤメモでは、書いたメモを参照しながら使うということを前提にしている。この点も多くのユーザーから支持されている点だ。

■ 独自の4分割罫線

こだわりは中の紙面にも及ぶ。表紙を開くと罫線のノートになっている。しかし、ちょっと違うのは、5行ごとに太めの線が引かれ、1ページがちょうど4等分されているところだ。

ミドリ ダイヤメモ

これこそ多くのビジネスマンを魅了した点である。例えば、5行分を月火水木金土の平日一週間分として使い、ちょうど1ページで4週分、つまり1ヶ月の予定表として使うことができる。この4等分というのは大変便利で、麻雀やゴルフなどは4人で行うので、スコアを付けるのにも都合いい。仕事だけでなくアフター5でも大活躍という訳だ。

同社はもともと日記帳の老舗メーカー。その日記帳に使われているミドリオリジナルダイアリー用紙「MD用紙」がこのダイヤメモにも使われている。この紙には、どんなペンで書いても書きやすくにじみにくい筆記特性に優れたもの。表面だけでなく、裏面も無駄なく快適に書くことができる。

一見すると、とてもさりげないのだが、実は細部にわたってこだわって作られたことが伺える。だからこそ50年もの間、多くの人たちに愛され続けているのだろう。

*このコラムは、神奈川新聞での連載「至福の文具」を加筆修正したものです。

□ ミドリ ダイヤメモは、こちらで販売されています。

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