文具で楽しいひととき
■ 「アンティーク調なシャープペンシル」 カヴェコ ペンシルスペシャル0.7 4,095円


 


□以前ある雑誌で、
 「万年筆は濡れた線を書く筆記具だ。」
 という表現が書かれていた。

 「濡れた線」というのは、
 実に的を得た表現だと思う。

 万年筆のペン先から出てくるインクは
 みずみずしさにあふれていて、
 書き立てホヤホヤの時は、
 まさに紙の上で濡れていてキラキラと輝いている。

 万年筆が「漏れた線」を書く筆記具であるならば、
 鉛筆やシャープペンは「紙の質感をあらわにする」筆記具ではないだろうか。

 特に太く濃い芯で書くと、
 それがよくわかる。


 


 紙は何も書かれていない状態だと、
 真っ白でその表面の質感というものに気づきにくい。

 しかし、
 ひとたび鉛筆で書いてみると、
 細かな凹凸があらわになる。

 これは、鉛筆やシャープペンの魅力の一つだと私思う。

 ということもあって、
 私はシャープペンでは0.5mmよりやや太めの0.7mm をよく使っている。

 すでに0.7mmシャープペンは、
 ラミー2000、ラミースクリブル、グラフ1000、カランダッシュ エクリドールなど、
 幾つも持っているのだが、
 また1本買ってしまった。

 それがカヴェコのスペシャルペンシル。

 ボディの美しいデザインに
 いちころになってしまった。


 


□これは、どうやらその昔販売されていたものを
 復刻したものらしい。


 


 私はウェブショップで買ったのだが、
 パソコンの画面で見ていた時には
 てっきり樹脂製かと思っていた。

 カヴェコというと、
 「カヴェコ スポーツ」というコンパクトな万年筆と
 ボールペンのセットがあるが、
 それが樹脂製だったので、
 きっと、これも同じだろうと勝手にそう思い込んでいた。


 


 しかし、今回のものは違っていた。

 メタル製だった。


 


 そして、
 手にするとひんやりとしている。

 それも2、3分もすれば人肌になっていく。

 ボディは全身艶消しになっていて、
 昔のペンシルという雰囲気を全身からみなぎらせている。

 軸は鉛筆と同じ六角軸と思いきや八角軸であった。

 ノギスで計ってみると、
 直径が10mm もあり、かなり太い。

 ちなみに一般的な鉛筆は7mm 。


 


 この様に見た目は太いのだが、
 どこか落ち着いたものを感じる。

 おそらくそれは、
 この太さと八角軸がとてもいいバランスを保っているからなのだろう。

 ちなみに、。
 この太さ、そしてメタル製ということで、
 重々しいという風に見えるかも知れないが、
 これが、意外と軽量。


□クリップはなく、ただただシンプルな八角軸のフォルム。

 しかし、
 その細部には、こだわりを感じさせる部分が幾つもある。

 まず、ペン先。


 


 艶消しボディにあわせて、
 ペン先もマットな仕上げになっている。

 しかし、そのペン先側だけは、
 マット具合がちょっと違う質感になっている。

 よく木の部分までブラックに染められた鉛筆というものがあるが、
 これはちょうどそのような感じ。

 そして、先端の芯を出すスリーブと呼ばれる
 パイプがペン先と一体化されている。

 もし、ここが一般的な現代のシャープペンのような
 銀色のパイプになっていたら、
 このアンティークボディも台無しになっていたことだろう。

 このペン先の作りが
 またいかしている。

 ペン先側に行くに従いだんだん細くなり、
 先端に行き着くと、美しいカーブを描いて、
 あくまでも自然なラインでまとめられている。

 ここからシャープペンの芯を出してみると、
 全くタイプの違う艶消しブラックが三つ並ぶことになり、
 これがまた美しい


 


□そして、次にノックボタン。

 天冠には、銀色のプレートに「 KAWECO」の刻印がある。


 


 横から見ると、よくわかるのだが、
 このノックボタンが丸みを帯びている。

 その周りはギザギザ加工になっている。

 これはひょっとすると、
 その昔のカヴェコ ペンシルでは、
 そこをクルクルとネジって
 芯を繰り出していたのではないだろうか、、という妄想が膨らんでいく。


 


 ちなみに、
 今回のモデルではそこ幾らネジっても、
 だだクルクルと回転するだけで何も出てきたりはしない。

 ノックボタン押し心地は確かな重みがある。

 ノック音がメタルボディの中で共鳴して、
 少しばかり高い「カチカチ」という音を奏でる。

 音と言うことで言えば、
 書いている時のいわゆる「筆記音」もちょっと独特。

 紙の上でカヴェコ ペンシルを走らせてみると、
 「シャラシャラ」という音が聞こえてくる。

 メタルボディということと、
 太い軸の中で音が共鳴しているのかも知れない。

 いずれにしても、
 ちょっと独特な音。


 


□日本では「シャープペン」と言うが、
 海外では、「メカニカル ペンシル」と言う。

 メーカーによっては、「メカニカル」をとって
 だた「ペンシル」と呼んでいるところもある。

 そしてこのカヴェコも「ペンシル」。
 メカニカルな部分がすっかり姿を消し、
 大先輩である鉛筆に敬意を表しているデザインになっているように感じる。

 このペンシルで、
 いろいろな紙の質感を味わって楽しんでみようと思う。


 


 (2011年4月5日作成)





 □ 記事作成後記

  私は0.7mmタイプ を買いましたが、
  この他、0.5mm、そして0.9mm タイプもありました。


 ■ 私は分度器ドットコムさんで購入しました。


□ 関連リンク

  ■ 「モバイル シャープペン」 ぺんてる ケリー 

  ■ 「ロングセラーのシャープペン」 ぺんてるグラフ1000
 
  ■ 「使うほどにわかる計算しつくされたデザイン」 ラミー2000 ペンシル

  ■ 「芯の出具合いを調整できるシャープペン」 ステッドラー REG 925 85−05

  ■ 「お手頃価格の本格シャープペン」 ロットリング 500

  ■ 「落書きという名のシャープペン」 ラミー ペンシル0.7mm スクリブルブラック L186A

  ■ 「地球に優しいスリムボディ」 ラミー スピリット ペンシル (パラジュームコート) 


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