■ 「鉛筆の削り仕上げを自分好みにする」 肥後守 1,785円
□3月のポカポカと暖かい平日に、
東京駅に出来たばかりの商業施設
「 KITTE 」に行った。
あえて土日を外したのは、
平日の方がゆったりと見られるだろうと思ったのだが、
そのもくろみは見事に外れた。
ちょうど春休みということもあって
たくさんの人でごったがえしていた。
そうした人たちをかき分けかき分け
向かったのは「アンジェ」。
本や文具などをセレクトしたショップだ。
ここのセレクトが実にいい。
文具にしろ本にしろ、
新製品的なものはあまりなく、
むしろやや古くから販売されているものの方が多い。
商品点数もそれほど多いとは言えない。
それがかえっていいのかもしれない。
というのも、
商品と商品の間には程よい距離感があり、
何気なくフラッと見ているだけなのに
一つひとつのアイテムがしっかりと目に入ってくる。
だからだろうか、
それらの商品としっかりと向き合え、
咀嚼することができる。
いつもこれを買おうと決めている訳でもないのに、
店を出るときにはほぼ必ずなにかを買ってしまっている。
ただでは帰れない店なのである。
□そして
私が今回買ったのが肥後守(ひごのかみ)というナイフ。
「考える鉛筆」という
小日向京さんが書かれた本の中で、
鉛筆を自分好みに削るなら
これに限ると太鼓判を押していたので、
ずっと頭の片隅で気になっていたものだった。
ただ、
どこでも売っているというものでもないので、
なかなか買えず、ずっと頭の片隅に居つづけていた。
それがアンジェさんの
ガラスショーケースの中にあった。
もちろん、
程よい距離感でいくつもの肥後守が並んでいた。
柄がステンレスのものと真鍮のものがあり、
どちらかにしようと悩み、
店員さんにお願いして実際に手にさせてもらうことにした。
持ち比べたところで、
さらに悩みは深まるばかり。
その時に店員さんが
真鍮の方が使っていると味が出ますよと
アドバイスをしてくれ、
その一言に後押しされ真鍮タイプに決めた。
□仕事場に戻った私は、
この肥後守を使って早速鉛筆を削ってみることにした。
ちょこんと出ている
「チキリ」と呼ばれるところを
下げて刃を広げる。
すると鋭い刃が
あらわになる。
小刀とはよく言ったもので、
まさに刀のように研ぎ澄まされている。
□正しく鉛筆を削るためには、
まずは正しい握り方が大切だ。
「考える鉛筆」によると、
右手で柄を握り、
親指を先程の「チキリ」という部分に添えるとある。
ここを押さえている限りにおいては、
刃はしっかりと固定される。
そして、
左手で鉛筆を持ち、刃に添える。
この時、
鉛筆を持った手の親指を刃の背の部分に添えるとある。
どうやら肥後守で鉛筆を削るには
親指が重要な役割を果たすようだ。
そもそも親指は一番指先が大きい。
その親指に合わせるかのように
「チキリ」にしても刃の背の部分にしても、
やや大きな面になっている。
特に刃の背はややカーブを描いているので、
親指を添えた時にピタリと気持ちよくフィットする。
カッターだと、ここがとても細いので、
指をあてると痛くなることがある。
これで正しい握り方ができた。
「考える鉛筆」には、
あとは刃ではなく鉛筆の方を動かして削るとある。
そうなのかなぁと思いつつ、
試してみるとたしかにこの方が
刃が必要以上に無駄な動きをしなくて済む。
左手の中指、薬指、小指をぎゅっと握ったり、
緩めたりすることで
鉛筆がスムーズに動かせる。
ザクザクと新品の鉛筆が気持ちよく削れていく。
ザクリと削ったら、
次に鉛筆を少しばかり回転させなくてはならない。
これも中指、薬指、小指の役割となる。
文章で書くとなんともややこしいが、
正しい握り方をして後は鉛筆動かすことだけを
頭に入れておくと、それだけで結構上手くいく。
ザクリザクリと
まんべんなく鉛筆を削ったら
仕上げとして、
芯先を整えていく。
芯に刃を優しく添え、
サーサーと刃先を芯に滑らせるように
削っていく。
不格好ながら、
一応書くことはできるくらいにはどうにか削ることができた。
□実は、
これまで私はアーミーナイフで鉛筆を削ることが多かった。
ここで、
この2つの削り心地を
改めて比較してみることにした。
アーミーナイフでも削ることはできるのだが、
芯の部分を細く長くするのがやや難しいということが、
肥後守を使うことでよくわかった。
肥後守の方では、
そうした芯の削り具合の調整が
とてもやりやすかった。
肥後守初心者の私でも
そのことを十分実感出来た。
たぶんこの差はこういうことなのだろうと思う。
2つの刃を比べてみると、
アーミーナイフの方は実際に切れる刃は先端だけで、
とても奥行きが狭い。
一方、
肥後守の方は、
刃全体の半分くらいまでが
切れる部分になっている。
加えて刃の角度が
肥後守の方が緩やかであるということもある。
アーミーナイフで削っていると
芯先を長くしようとすると
途中でポキッと芯が折れてしまうことが多かった。
刃の向きを軸から芯先に行くにつれて、
だんだんと水平にしていかなければならないのだが、
いかんせん刃の奥行きが狭いので、
その調整がしづらい。
肥後守の場合は、
刃先が広いので刃の角度の調整が
しやすいということがあるのだと思う。
なんでもっと早く
このことに気づかなかったのだろうと、
思ってしまった。
誰しも文字を書くときに
F(細字)、M(中字)、B(太字)など
好きな字幅というものがある。
鉛筆を肥後守で削れば、
それを自分好みのいいあんばいで
作れるようになる。
肥後守を手にしたことで鉛筆を使う楽しみがまた一つ増えた。
(2013年4月30日作成)
■ 私が買ったのは、たぶんこれだと思います。
もしくは、これかなとも思います。。
■ 各種 肥後守はこちら
■ 参考図書 「考える鉛筆」
■ Shop アンジェ さん
■ 記事作成後記
肥後守には、
トンボの8900のパッケージがなんとも似合います。
鉛筆を削ると出てくるのが削りカス。
黒鉛芯の細かなカス掃除に
結構便利かなと思っているのが練り消し。
拭き取るより、
吸い付ける方がキレイにできるような気がします。
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