■ その81 「宇宙でも書けたボールペン」 フィッシャー スペースペン ブレット 3,150円
□1969年、世界で初めて有人月面着陸を成功させたアポロ11号。
アポロ11号の重要な任務のために採用された
今なお語り継がれているいくつかの名品がある。
腕時計のオメガ スピードマスター、アルミ製アタッシュケースのゼロハリバートン、
そして、今回ご紹介するボールペンのフィッシャー スペースペンだ。
NASA(アメリカ航空宇宙局)から宇宙でも書けるボールペンを作って欲しいという
依頼を受け、フィッシャー社が100万ドルものお金を投じて開発した。
このフィッシャースペースペンの最大の特徴は、そのリフィル(インクカートリッジ)にある。
ふつうのボールペンの芯は、リフィルの中のインクを重力によって
下に押し出す原理を利用している。
だから、重力のない宇宙では、これまでのボールペンは使えない。
そこで、フィッシャース社は、重力に頼らなくてもインクが出る方法を考え、
窒素ガスにより、インクタンク内の圧力が常に一定に保たれるカートリッジの開発に
成功した。
これこそ、宇宙空間での筆記を可能にしたプレシュライズド インクカートリッジだ。
プレシュライズド インクカートリッジと言っても
ちょっと分かりづらいかも知れないが、こんなイメージだ。
インクカートリッジにはペン先側にインクが、そしてその後ろ側には
窒素ガスが入っている。
その間には、ふつうのボールペンではあまり見かけないスライドする仕切りがある。
常に一定に保たれた窒素ガスの圧力によって、その仕切りが押しだされて、
ペン先から常に一定のインクが出るというものだ。
ちょうど、ところてんを押し出す仕組みに似ているかもしれない。
□実際に、宇宙に行って書けるかどうかを試してみるのが一番よいのだが、
なかなか、そうもいかない。
この無重力でも書けるというリフィルの凄さを実感するには、
上を向いて書いてみるという方法がある。
前述のとおり、通常のボールペンは、重力を使ってインクをペン先に
押し出しているので、
上に向かって書くと、じきに書けなくなってしまう。
ボールペンの取扱説明書には上に向けて書かないでください、と
明記していることもあるくらいだ。
そこで、このスペースペンで上に向かって書いてみると
インクはかすれることなく、見事に書き続けることができる。
フィッシャーペンは全く問題ないのだが、
その無理な体勢に私の方が先に耐えられなくなってしまった。
フィッシャーペンは、さらに水の中でも書けるそうだ。
(これは、試しませんでした。。。)
独自に開発されたちょっと粘り気のあるインクは100年以上
リフィルの中で蒸発することなく使えるというから驚きだ。
私は37才でこのペンを手に入れたので、とうてい100年間は使えない。
息子に頼んで孫の代まで使ってもらおうかと思っている。
□商品名にブレットとあるように、外観はまさに弾丸のようなフォルムをしている。
クリップのないとてもすっきりとした、そのデザインの評価は高く
ニューヨーク近代美術館MoMAに永久展示されている。
キャップを引っ張ると、「プチッ」という音とともにペン先が顔を出す。
その「プチッ」という音の正体は、グリップのすぐ上にぐるりと巻きつけられた
ゴムのわっかにあった。これがキャップの中を密閉構造にするための
シーリングの役割になっているようだ。
キャップをはずすと、そのゴムがこすれて先ほどのような音がする。
キャップをした状態だとわずか9.5cmしかないが、
はずしたキャップを後ろにさすと全長13.5cmと筆記に十分な
長さとなる。
グリップ部分には、荒削りにつけられた細い溝がぐるぐると
らせん状につけられている。
素手で握るとちょっとザラザラとしているが、宇宙服の手袋の上からなら
ちょうど良いのかもしれない。
□書き味はと言うと、独自に開発された粘着性の高いインクならではといった
まさに、粘り気のある書き味だ。
サラサラと書けるゲルインクに慣れきってしまった今としては
懐かしい書き味とも言える。
□今回、スペースペンを手に入れたので
これで、はれてオメガスピードマスター、ゼロハリバートン
のアポロ11号の3つの名品が揃った。
これさえあれば、いつでも月に行ける、 と言うわけでもないが
その気分だけは十分に味わうことができる。
(2005年6月21日作成)
■ スペースペン ブレットは、こちらで販売されています。
■ フィッシャー スペースペン ブレット はこちらで手に入ります。
■ こちらでも手に入ります。
*アポロ11号の際に、実際に使われたのは、フィッシャースペースペン AG-7 というタイプです。
今回ご紹介したブレットは外観は違いますが、中に使われているリフィルはAG-7と同じものです。