■ その118 「ブロッターデビュー。」 コレクト ブロッター 木製 1,470円
ABS樹脂製 1,008円
□私とブロッターとの出会いは、今からさかのぼること16年ほど前、
ちょうど私が新入社員だった時のことだ。
当時、直属の上司の机にポツンとそれが置いてあった。
初めて見た時は、それが何なのかさっぱりわからなかった。
その机を通りかかった他の社員が、
やはりその不思議な形をしたブロッターを目にとめ、
「それは何ですか?黒板消し?」などと聞いていく。
私もとても気になっていたので、全身を耳にするように聞き耳を立てていた。
上司はこれはブロッターといってハンコを押したり、万年筆で書いた文字の
余分のインクを吸い取るものだと説明していた。
なるほど、そういうものだったのか、とようやく私も理解することができた。
それ以降も、たくさんの人たちがそのブロッターを見かけては
みんな判でも押したように「それって、黒板消し?」などと聞いてくる。
はじめのうちは、上司も丁寧に答えていたが、
さすがに面倒くさくなったと見えて、
目もあわせずに「そうそう、黒板消し。」と答えていた。
「へぇ、こんな形でよく消せるな〜」と怪訝な顔して立ち去っていく先輩社員の
後を追いかけて、私はこれが何であるかを説明していた。
ということで、私の中で「ブロッター」とは
使い方はだけは人一倍知っているけど、
実際に使ったことのないという、
私の中でちょっと変わった位置づけの文具だった。
□万年筆で色んなノートに書くことが多い私は、インクの乾きを待って
ノートを閉じるもどかしさを感じることもたまにあって
あのときの上司のブロッターを不意に思い出し、ひとつ手に入れてみることにした。
□ネットで探してみたのだが、すごく値のはるものや、
印鑑1つぶんくらしか吸い取れないような小さいものばかりで
なかなかちょうどよいものがなかった。
そんな中で見つけたのが、このコレクト社のものだ。
日本製なので、値段も手ごろだし、消耗品である吸い取り紙の供給も
きっと安定しているだろうということも購入の決め手となった。
今回手に入れたのは、木製タイプとプラスチックタイプの2種類。
□木製タイプの方は、当時みんなが揃って勘違いしていた
古きよき時代の黒板消しみたいな感じだ。
細かなところまでしっかりと作りこんでいるというよりは
多少荒削りなところもあったりする。
しかし、きっと使い込んでいくうちに、いい味がでてくるのではと
思える素朴さにあふれている。
吸い取り紙をどう取り付けるかというと、
取っ手をクルクルとねじって本体を緩める。
そうすると、平らな台座と横からみると三日月状になっているパーツが
動かせるようになる。
ちょうど十字になるようにずらして
吸い取り紙を曲面にあわせて添えて両端の余った紙を折り返してセットする。
ちなみに、吸い取り紙に裏表はないそうだ。
ということは、片面を使い終わった後に裏面も使えるのでは、、、と思い
メーカーの方にお聞きしてみたら、吸い取り紙の汚れが気にならなければ
使うことも可能とのことだった。
まぁ、積極的にそういう使い方はしないと思うが、
吸い取り紙を切らしてしまったときに、応急処置としていいかもしれない。
□もう一方のプラスチックタイプは、
うって変って流れるようなラインが美しいモダンな雰囲気。
この吸い取り紙の交換方法は、また違っていて
弓のようにしなった曲面を描いているパーツのどちらか片側を
グイッと内側に折り曲げてはずす。
そして、先ほどの木製タイプを同じ要領でセットすればOK。
□では、実際に吸い取ってみる。
せっかくなので、私の持っている万年筆の中でとりわけインクの出がいい
モンブランの146で試してみた。
書きたてのみずみずしさあふれる筆跡の上をゴロンと転がす。
筆跡を崩すことなく、あくまでも余分なインクだけを吸い取ってくれる。
ブロッターのほうには、反転した文字が写り込んでいる。
さすが、吸い取り紙というだけあって
一度吸い取ったインクは、再びゴロンと転がそうが、
吸い取り紙のインクが紙に写ることはなかった。
ブロッターの機能としては、これ以上でもこれ以下でもなく
ただただ、余分なインクを吸い取るということに徹している。
□木製タイプとプラスチックタイプの両方を使ってみて
それぞれに使い心地に違うものがあった。
木製の方は、吸い取る面のカーブがやや緩やかになっている。
しかも、吸い取り紙と本体の間にはフェルトのようなものがあるので、
紙に押し当てたときに、それがほんわかとしたクッション効果を生む。
緩やかなカーブとこのクッションにより、
まるで、赤ちゃんのゆりかごのように優しくゴロリと転がる。
ちなみに、このタイプには取っ手が付いているのだが、
この取っ手だけを握って使うとなんとも不安定な感じがする。
そんな時は、人差し指を伸ばしてゴロリとやるとうまくいく。
□一方のプラスチックタイプは、取っ手がない代わりに
わしづかみしやすいように本体がいい具合にえぐれている。
ここをギュッと握りしめて、紙の上に添える。
先ほどの木製タイプのようなクッションはなく、その代わりに
紙にピタッと触れる。
吸い取る面も木製タイプよりも、きつめのカーブを描いているので、
先ほどの揺りかごに対して、こちらは、ブランコのような
高低差のあるゴロリが味わえる。
この2つの使い分け方としては、
時間がたっぷりとあるときは木製のタイプで
木のぬくもりや紙に添えたときのクッションなどを愉しみながら
心穏やかに吸い取るのがいいだろうし、
急いでいるときは、
プラスチックタイプの方が扱いやすいように思う。
この両方のタイプとも、コレクト社純正の吸い取り紙(P−200 20枚入)が使える。
□このブロッターの吸い取れる紙の範囲は
B5サイズのノートの1ページの横幅が1回のゴロリでほぼ吸い取ることができる。
また、Moleskineのポケットサイズであれば、ブロッターを縦に持ってゴロリとやれば
多少横幅が足りないものの、ほぼ1ページ分がこれでいける。
□自分のお気に入りの万年筆で書いた文字をしっかりと残す最後の儀式として
このゴロリという行為は純粋にとても愉しい。
万年筆で文字を書く愉しみが、またひとつ増えたような気がする。
(2006年11月7日作成)
■ コレクトの各種ブロッターは、こちらで販売されています。
■ コレクトの木製ブロッターはこちらで手に入ります。
■ コレクトのプラスチック製ブロッターはこちらで手に入ります。
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