文具で楽しいひととき
セネター
クレバー 水性ボールペン
今年のドイツ ペーパーワールドでは、たくさんのペンを見てきた。その中で、最もインパクトがあったものを1本あげなさいと、言われれば、私は迷うことなく、このペンを選ぶと思う。ドイツのペンブランド、セネター社のクレバーというペンだ。
何がそんなにインパクトがあったかと言えば、それは、ペン先が曲がるというユニーク極まりない仕組みを持っているところだ。しかも、そのペンが曲がるということに、しっかりとした意味が込められているのに私はいたく感心してしまったのである。
ペン先が曲がると言っても、力づくで折り曲げるというものではない。
■ 尻軸をねじるとペン先がおじきし始める
そこには面白い仕掛けが隠されている。どうするかと言うと、尻軸をクルクルとひねるというものだ。ちょうど吸入万年筆のように。
ただ、万年筆の時とは違うのは、ひねる時にカチカチというクリック感が伴う。カチカチとひねっていくと、それに合わせて、ペン先がジワリジワリとおじぎをするように折れ曲がっていく。この動きがなんともコミカル。尻軸には、0から15までの数字が並んでいて、ダイアルの様に回して、ペン先の曲がり具合を調整できるようになっている。
つまり、お好みに応じて曲がり角度を調整できる訳だ。お好みと言われても、ペン先が曲がるなんて誰も好みやしないよ!という声があちらこちらから聞こえてきそうだ。しかし、このペン先の折れ曲がり、ちゃんとした意味がある。少なくとも私はそう思う。
このクレバーは水性ボールペンになっている。ここがとても大きなポイントだと思う。ご存じの方も多いと思うが、水性ボールペンはサラサラとした書き心地から、欧米では特に人気の高いペンになっている。
きっと同じ水性インクを使っているということもあり、万年筆ライクに書けるのが好まれているのだろう。確かに、水性ボールはサラサラと書けるのだが、万年筆に比べてひとつだけ弱点がある。それは、万年筆のようにペンを寝かせて書くのに限界があるということだ。
水性ボールペンは、ペン先のチップ(ボール)をかしめているため、ある程度の角度以上に寝かせて書こうとすると、それが紙に当たってカリカリとひっかかってしまう。
私は、万年筆を結構寝かせて書くタイプなので、その調子で水性ボールペンを書こうとしても、先ほどの理由で書きにくくなっていしまう。そこで、どうしてもペンを起こし気味にしてあげる必要があった。ペンによって持ち方をいちいち変えなくてはならないというのは、なんとも面倒くさい。
■ 水性ボールペンを寝かせても書ける
そこで、このクレバーだが、ペン先が折れ曲がるので、気兼ねなく、寝かせて書くことができると言う訳なのだ。私の様な「ペン寝かせ症候群」の人に待望のペンと言える。私みたいに極端に寝かさないまでも、人それぞれの筆記ポジションというものがあると思う。
それをあらかじめ、尻軸のダイアルで合わせておけば、いつでも心地よい筆記が楽しむことができる。書くたびにカチカチと調整しなくて済むように、キャップは大きく膨らんでおり、曲ったペン先のままでも収納することができる。しかも、ご丁寧にキャップの一部はスケルトンになっているので、ペン先の曲がりを外からでも確認できるようになっている。
折れ曲がる意義は大方お分かりいただけたと思う。ただ、気になるのは中は一体どんな仕組みになっているのかということではないだろうか。そこで、ボディを分解してみてみた。中からは、とりたてて変わった様子のないリフィルがで出てくる。
ただ、ペン先の部分だけはゴムでできていて、クネクネと折れ曲がるようになっている。これにより、あの曲がりを生み出していたのだろう。
でも、ここで疑問がわく、ペンの後ろ側を回転させているのに、なぜその反対側のペン先が曲がるのだろうか。色々といじくっていたら、リフィルが押し込まれるとペン先が曲がるということが、分かってきた。
つまり、尻軸を回転させていたのは、リフィルをペン先側に押し込んでいたのだ。折れ曲がった状態で実際に書いてみると、見た目の違和感とは裏腹に、とてもスムースだった。
万年筆の時のように寝かせても当然、ペン先のひっかかりははない。
ペン先が斜めになっているということで、筆圧が上手くペン先にかからないのではと、思ったが、そもそも、 水性ボールペンは、あまり筆圧を書けずとも書けるペンなので、全く問題はなく普通に書くことができた。これが、もし油性のボールペンだったら、話は違っていただろう。
水性ボールペンをより万年筆ライクに書くことを楽しませてくれるペン、クレバー万年筆王国ドイツならではのペンだと思う。
*残念ながら、セネター社の日本代理店はまだないようです。
セネター社 オフィシャルサイト
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