文具で楽しいひととき
ライフ
ノート
ひとつの文具を作るためにはたくさんの人の力や技術が結集されている。そこには文具メーカーのみならず、それを支える社外の協力会社の人たちの貢献も大きいと思う。ノートメーカーのライフ社も然りで、色々な協力会社の力を借りながらノートをひたむきに作り続けている。
■ 受発注を超えた関係
ただ、ライフがちょっと違うのは、そうした協力会社の存在を正々堂々と表に出している点だ。先日、エイ出版から出版された「ノート&ダイアリースタイルブック」にもライフ社のそうした姿勢は、よくあらわれていた。ライフの斎藤社長と協力会社の人たちが、まるで家族のように微笑ましく写っている写真がある。お持ちの方は、ぜひ見ていただきたい。そこには、受発注という関係を超えた何かがあるように見える。
多くのメーカーは、あたかも全てを自社で作っているかのように、協力会社の存在をあまり見せないようにしている。少なくとも私の目にはそう映る。ライフ社では、協力会社の人たちを隠すどころか実際、その記事の中でも、「私たちの自慢です。」と誇らしげに公言しているほどだ。
■ 裁断機の刃が研ぎ上がった時だけ作る
さすが自慢するだけのことはあって、そうした協力会社の仕事ぶりには並々ならぬものがある。例えば、ライフのロングセラー「タイプライティングパッド」というものがある。
これには、とても薄い紙が使われている。そのため、紙の裁断には神経を使わなければならない。この裁断を受け持つ協力会社は、一糸乱れぬ仕上がりにこだわるため、裁断機の刃が研ぎあがった時にしか行わないのだそうだ。
また、リングノートの穴をあける作業については、自動化された機械ではなく、足で踏んで動かす機械でもって1冊1冊に穴をあけている。
なぜ、わざわざ手間のかかる足踏み方式にしているかというと、足踏み式であれば、刃をはずして研ぐことが出来るからだそうだ。そうやって丹念に穴があけられたからだろう、確かに、このN90リングノートも引っかかりのないスムースなめくり心地がある。
さらに、このノートでは、表紙のうらおもてに高級感のある紙が張りあわせられている。しわひとつない自然さな仕上がりも見事だが、実は、もうひとつ協力会社の方がこだわっていることがあるという。
一般に紙をのりで張りあわせると、どうしても反りが生まれやすくなってしまう。この反りを起こさせないようにするため、張りあわせてた表紙の作りおきはしないのだという。
効率から言えば、あらかじめたくさん作っておいたほうがいいはずなのだが、出荷する分だけ張りあわせるという手間のかかる手法をあえてとっている。
■「加工先さん」
斎藤社長によると、協力会社の方々のこうしたこだわりは、ライフ社からお願いをした訳ではなく、あくまでも、協力会社の職人さんたちが率先してライフのノートを作るときはそうするべきと自らが決めているのだという。では、なぜ協力会社の人たちがそこまでして、要求以上のいい仕事をしているのだろうか、おそらく、たくさんの仕事を抱えているだろうに、協力会社の方々をつき動かしているのは、一体何だろう。
その答えを私自身ずっと探していたのだが、斎藤社長が私に話してくれたひとつの言葉に象徴されているように感じた。それは、「加工先さん」という言葉だ。「下請け」や「業者」という表現ではなく「加工先さん」。
私自身、初めて聞く言葉だった。この言葉からは、上から下を見たというよりも手をとりあって一緒に頑張る同志のような印象がある。おそらく、ライフ社が協力会社の方々に接する姿勢というものが、この言葉に如実に表れているように思えてならない。まさに、あの写真から醸し出されていたのは、きっとこれなのだろう。
一緒にノートを作っている会社を大切に考えている、ライフ社のその姿勢が、加工先さんの一人ひとりにまでに染み渡り両者の信頼関係を生み、クオリティの高いノートを作り出しているのだと思う。
ライフ タイプ用紙A4
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