文具で楽しいひととき
セーラー万年筆
プロフェッショナルギア
ラピタ6月号(2006年)「国産万年筆特集」では、総勢32本もの国産万年筆を一気に書かせていただく幸運にめぐりあえた。あれだけの本数の万年筆を書くというのはそうめったにあることではないので、ここぞとばかりにたっぷりと愉しませていただいた。
■ 書き味が手にしっかりと残った
そんな中で、私はちゃかりと「これはぜひ買おう」と目をつけておいた万年筆がいくつかあった。その1本がこのセーラー万年筆のプロフェッショナルギアだ。
名前からすると、アウトドア用品やマウンテンバイクなどをイメージしてしまいそうだが、実にバランスのとれた万年筆だ。外観はボディの両端をスパッと切り落としたスタイルをしている。そのせいだろうか、全体の印象としては結構小ぶりに見える。
モンブランの146と並べてみるとよくわかるのだが、仮に、この両端がカットされずに、丸い山になっていたら146とほぼ同じくらいの長さになっていたであろう。小さく見せながらも、実はちょうどよい大きさなのだ。
■ 美しい21金ペン先
キャップをクルクルと回してはずすと、そこには、キラキラと神々しく輝くペン先が顔を見せる。私は、このペン先の美しさにイチコロになってしまった。
このプロフェッショナルギアは、セーラーの十八番の21金ペン先という贅沢なつくりになっている。ペン先には、ゴールドと、銀色のロジウムの2種類がある。金色の美しさも捨てがたかったのだが、ブラックボディとシルバーというシックなコンビネーションを今回、私は選んでみた。ペン先をよく見てみると、中央にある刻印がとても特徴的なつくりになっているのに気づかされる。
モンブランでは、刻印がしっかりと刻みこまれているのに対して、このプロフェッショナルギアでは、まるでぐいっと型押ししてつくったかのようなやわらかな表情に仕上げられている。このやわらかな刻印からもこのペン先のやわらかさというものが視覚的にもとても伝わってくる。
よく、万年筆のペン先が固いとか柔らかいとか言うけど、このプロフェッショナルギアで書いてみて万年筆のペン先が柔らかいとは、こういうことを言うのだとガツンと思い知らされた気がした。
■ 真綿のような感触
紙の上をペン先がやわらかなクッション効果を伴って、やさしく、軽やかに進んでいく。まるで、ふわふわとした真綿のような感じとでも言ったらいいだろうか、、
ペン先からはよどみなくでてくるインクとあいまってそれはそれは気持ちいい。体の中央で、これまで眠っていた喜びをつかさどる細胞が目を覚ましたかのような、そんな感じがわき上がってきた。私は、比較的筆圧が弱めな方なのだが、そんな私でも、このしなやかなやわらかさは一筆一筆ごとにしっかりと、手元だけでなく全身いっぱいで感じることができた。
■ 21金の迫力
このやわらかな書き味は、ペン先に使われている21金ということよりも、むしろ、ペンの形状からきているのだと思う。
たびたび引き合いに出してしまうが、モンブラン146のペン先とじっくりと見比べてみると、ペンの先端がほんのわずかだが、プロフェッショナルギアの方が、より細く仕上げられていることが見てとれる。
【左:プロフェッショナルギア 右:モンブラン146】
太いものよりも細いほうがよくしなるようにあの喜びのやわらかさはこの細さによるところが大きいのだと思う。モンブラン146で書いている時は、心のどこかで、「書かせていただいている」みたいな感じがあったように思う。でも、このプロフェッショナルギアでは、私が主体となって、ペンを操って書いている。私のコントロール下に万年筆があるという風に感じられるようになった。
久しぶりに体の底から喜びを感じられる1本との出会いだった。いいペンとの出会いは、本当に幸せな気分にしてくれるということを改めて感じさせてくれる万年筆だ。
セーラー万年筆 プロフェッショナルギア
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