文具で楽しいひととき
ロットリング
リーフ 万年筆
ISOT(国際文具・紙製品展)の事務局に在籍していたときにロットリングさんのブースに人魚がいた。もう、かれこれ10年くらい前のことだ。人魚といっても本物ではなく、そいう格好をしたモデルさんだった。
その時に発表されていたのが、このロットリング リーフ。それまでにない、とてもユニークなフォルムをしたペンだった。よくモーターショーなどで近未来的なコンセプトカーが展示されているが、このリーフはまさにそんな雰囲気をたたえていた。今、見ても新鮮だが、10年前のその当時は、展示会場の中でもそれはそれは目を引く存在だった。
ロットリング社によると人魚をモチーフにしたということだが、私の第一印象は「イカみたい。。。」と思えてしょうがなかった。8歳の息子に見せたところ「きゅうりみたい。」と言っていた。そう見えなくもない。私たち親子はかなり人と違った見方をしているようだ。
■ ロットリングのトレードマーク「レッドリング」がない
とにもかくにも、斬新なデザインであることに違いない。ロットリングのペンと言えば、トレードマークであるレッドリング(赤い輪)がつきものだが、このリーフにはなんと、どこにもない。これは、かなりまれなケースだと言っていいだろう。流面形のボディの半分くらいまでキャップが占めている。そのキャップをはずしてみると、さらに驚くことになる。
■ グリップが大胆に凹んでいる
グリップ部分がひょうたんのようにくぼんでいる。樽型をした膨らんだグリップは見かけるが、こうしたへこんだグリップはかなり珍しい。不思議な形状のグリップだが、握ってみると、これが意外としっくりとくる。
くぼみのところを握ってもよし、ちょっと上の太くなったところを握ってもよし。色々な握り味が楽しめる。はずしたキャップを単体で眺めてみると、口が斜めにカットされていてまさしく、イカの頭のようだ。このキャップを胴軸の後ろ側にさしてみると、ここでようやく、人魚のフォルムを拝めることができる。
ひょうたん型のくぼみが女性の上半身のように、そしてイカの頭に見えていたキャップが尾ひれのように見えてくる。イカの仮面をかぶった人魚だったのだ。胴軸には小さなくぼみが模様のようにあり、滑り止め効果にもなっている。
■ 専用スタンドもユニーク
このリーフにはクリップが見当たらない。どうやら携帯するペンということではないらしい。クリップがない代わりに、専用のスタンドが用意されている。ペンも斬新なら、スタンドもしかりで、まるで蚊取り線香のようだ。
そのスタンドにリーフをセットしてみると、ちょっとしたオブジェに早代わりする。書き終わって、ペンをこのスタンドに戻すとスタンドのバネ効果でしばらくゆらゆらと静かに揺れる。仕事中の頭をちょっと休めて、ゆらゆらした姿を眺める、なんていうのも楽しい。
ロットリングと言えば、プロも愛用する製図のペンというちょっと固めなイメージが当時あった。そんな中で生まれたこの斬新なリーフ。
このリーフ以降、デザイン性にも力をいれたペンが次々に出来てたように思う。このリーフはロットリングの製図ペンという既成のイメージに加え、デザインのペンという新しい路線に進むきっかけとなったのかもしれない。そういう意味あるペンだと私は思っている。
■ リーフは現在、絶版となっています。
今回ご紹介しましたリーフは、静岡のステーショナリーショップのインク様よりご提供いただきました。
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