文具で楽しいひととき
ニュルンベルグ、ミュンヘン
ドイツの文具作りに直に触れることができたステッドラー社の工場見学。
その合間を縫って町の文具店巡りもしっかりと行ってきた。これなくしては私の旅行は始まらない。というよりもむしろ文具店巡りは私のもはや習性みたいなものになっている。国内外を問わず、見知らぬ町を訪ねると、ついつい文具店を探してしまう。今では私の鼻は、文具が放つにおいをある程度かぎ分けられ、文具を売っている店を結構探し出せるようになってきている。
ドイツでは、文具店が軒を連ねているという場所はなく、町の中にポツンポツンとあるだけだった。ニュルンベルグ、ミュンヘンで、4店をまわりあれよあれよという間に250ユーロも使ってしまった。つまり2万5000円(当時レート)ほど。とはいえ、特に高額な筆記具を買った訳ではない。それでもいつの間にやら250ユーロにもなってしまった。
改めて買ったものを眺めてみると、そのほとんどは紙製品とファイル。ペンについては日本で見かけないものを探す方がむしろ難しかった。紙製品やファイルの方がまだまだ新しいものを見つけられる余地が残っているようだった。その250ユーロの全貌をお届けしてみたいと思う。
■ ニュルンベルグの書店「Thalia」
初めに訪れたのは、ニュルンベルグの中心街にあった「Thalia」という大型の書店。4~5階ほどのフロアがあるビル丸ごと本屋さんという大型店。店内は、ゆったりとした雰囲気になっており、本だけでなく雑貨や子供用の知育玩具、さらには本と本の合間にクッキーまでもが並べられていたりもした。
それが不思議と売り場ではとけ込んでいて、よくよく見てみると、雑貨やお菓子もその隣の本とテーマ的にしっかりと関連づけられていうようだった。お目当ての文具売り場は最上階に設けられていた。ワンホール全て文具売り場ではなく、一区画にノートやファイル、ペンなどがセレクトされてディスプレイされていた。
これは面白い!とまず目を付けたのが色鉛筆が大きくプリントされたシール。ただのカラフルなシールというだけでは40歳過ぎの私も関心を示したりはしない。これが面白いと思ったのは、ファイルの背に貼る専用のシールであったためだ。
ファイルの背に貼るシールというとタイトルやインデックス用というのが思い浮かぶが、これはそうしたものではない。一枚一枚のシールには、いくつもの色違いの色鉛筆がプリントされている。これをファイルの背に貼って、何冊かを並べると色鮮やかな色鉛筆のグラデーションができ、ファイルの背をデコレーションできるというものだ。
インデックスとしてのシールではなく、あくまでも飾るためのシール。味気なくなりがちなファイルの背を楽しく、そして美しくすることができる。この色鉛筆タイプのほか、つなげると世界地図が完成するものもあった。数字やタイトルのインデックスと違い、このデコレーションスタイルがいいのは、一冊でもファイルが欠けると、色や絵がずれて一目瞭然となるところだ。
ただし、これはライツなどでよく見かける背に穴の開いているファイル専用に作られている。
4.95ユーロ
他にめぼしいものがなく文具売り場を離れ、同じフロアを鼻をきかせつつ見ているとデザイン書籍コーナーにクルクルと回転するスタンドに入った手帳を発見した。「teNeues」というブランド。
聞くところによれば、日本でも一部展開を始めているらしい。黒い手帳は少数派で、カラフルなものがサイズを含めていろいろとあった。中でも色鮮やかだった紫を購入。私が買ったタイプは MOLESKINE よりも一回り小さいくらいのサイズ。紫カバーの表紙を開けると、さらに鮮やかなグリーンの見返しになっていて、そこにブルドックが描かれている。
中の紙面はゆったりとした幅の横罫線。ちょっと不思議な紙面をしていて、なぜか罫線は右側にしか印刷されていない。裏表紙にはポケットも付いている。
それにしても、紫にグリーンを合わせるという配色、日本ではちょっとお目にかかれない独特な色彩感覚だ。ドイツの売り場ではこれもすんなりと馴染んでいた。これはいいと買ってはみたものの改めて日本に帰って見てみると、さすがに日本では派手すぎて使いづらい。よく、現地の感覚で派手な洋服を買ってきて日本では着ずじまいということがあるが、私は、それを文具でやってしまったようだ。。
6.95ユーロ
■ ミュンヘンの文具店
ミュンヘンを訪ねた際に、中心街にあった大型文具店に入ってみた。こちらもビルまるごと文具店という大規模店。店内に一歩入ったとたん、文具のにおいを嗅ぎ分ける私の嗅覚がピクピクと敏感に動きだした。
「ここには何かあるぞ!」と直感めいたものを感じた。1階はレーザーステーショナリー、そして高級筆記具売り場になっている。まず私の大好物のペンコーナーから攻めてみた。パーカー、ウォーターマン、ペリカン、ラミーなど日本でもおなじみのブランドがショーケースの中に並んでいた。しかし、どれも日本で販売されているものばかりで残念ながら収穫はなかった。
レザーステーショナリー コーナーに移ってみると面白い手帳を発見した。手の平サイズの革の手帳だ。ブラック、そしてホワイトレザーもあり、表紙に飾りなどないシンプルなデザイン。さらによく見ると一本のショートサイズのペンがセットされていた。
このペンがボールペンではなく芯ホルダーになっていた。MOLESKINE サイズほどの手帳で、そのサイズにピタリとくる短い芯ホルダー。手帳よりもこのショートサイズの芯ホルダーにすっかり魅せられてしまった。手帳の値段を確かめてみると、100ユーロ(1万円)ほどした。買おうかどうしようか、さんざん迷ったが、さすがに、これはちょっと高いと諦めることにした。
芯ホルダーだけ売ってないかと、周りを探してみたが、残念ながら見あたらなかった。思いっきり後ろ髪を引かれながら、その手帳そして芯ホルダーをあとにした。同じレーザーコーナーでまた気になるもの発見。
やはり思っていたとおり、この店には何かある。それはレーザーのトレー。これは四隅をパチンパチンと留めて使うトレー。前々からこういうトレーを私は探し求めていた。しかも私の大好きなレッドカラーがあった。
なぜ、こうしたトレーを探していたかというと、オフィスで財布や小銭入れ、鍵などをひとまとめに入れておくためである。出掛けるときは、その三点セットをバサリと手にしていく訳だが、置き場を決めておかないと出がけに、さてどこにいったっけ?と慌てることもしばしばあった。
こうした専用のトレーがあれば間違いなく、いつも同じ場所に置いておくことができる。しかも、折りたたみ式なので出張した時にも使うことだってできる。
滞在先のホテルだと、いつものオフィスとは勝手が違うので、さらに財布と鍵どこいったっけ状態に陥りやすい。値段を見ると27.95ユーロ。つまり3,000円ほどだ。先程100ユーロの手帳を&芯ホルダーを見たすぐ後だったので、これは安いではないかと見事に錯覚を起こし、すぐさま購入。
次に向かったのが事務用品売り場。おそらく会社で使うであろう事務封筒などがいろいろと並んでいた。
いつもならこうした売り場は、私にはあまり関係ないと、やり過ごすことが多いが、この店には何かあると感じていたので、念のため見ておくことした。封筒群の横に鮮やかなイエローの段ボール箱があった。「MAIL BOX」とあった。
小包を送るときに使う箱なのだろう。私はその段ボール箱をじっくりと見つめ、だんだんとこれを使うイメージが頭にクッキリと浮かんできた。ちょっと前に雑誌「BRUTUS」で整理特集があった時に箱にナンバーシールを貼り付けて壁一面の棚に管理している写真が掲載されていた。それと同じようなことがこれで出来るかもしれない。
私のオフィスには壁一面の棚もなければ、そもそもそうしたものを入れるものない。だけど、私もそれを少しだけ味わってみたいと思い、 XS と S という小さいサイズを2つずつ買ってみることにした段ボールなら持って帰るのにも軽くて荷物にならないし、これはいいだろうと。
XS サイズ1.25ユーロ。 S サイズ1.6ユーロ。
次にノート、ファイルのフロアに向かった。売り場を歩きだして、すぐ、私の鼻はひとつのノートを見つけ出した。「CONCEPTUM」というドイツのものでおそらく日本ではまだ紹介されていないブランドだ。幅2mくらいもある専用ディスプレイで大きく展開されていたので、どうやら今売り出し中のノートブランドらしい。
ゴムバンドで表紙をとめるいわゆる MOLESKINE タイプなのだが、雰囲気はかなり違う。北欧デザインを思わせる温かみのある色、そして素材になっている。合皮カバーの他にフカフカとしたフエルト素材タイプもあった。
カバーと中の手帳は完全に一体化されている。表紙を開くと、その裏側にはコーナーポケットが備え付けられている。次に目次ページがあり、本文は無地というシンプルスタイル。
その無地紙面の中で唯一印刷されているのがページ No 。全ページに印刷されているので、巻頭の目次ページと連動させて使えば、検索性もグッとあがる。
紙質はツルツルとザラザラの両面をあわせ持っているような中間的な質感。紙はそれほど厚くはない。紙製の下敷きが付属されていて、気が利いているのは、表面が横罫線、裏面が5ミリ方眼になっている。
これを挟み込むと、薄い紙が功を奏してうっすらと下敷きの線が浮かびあがるという寸法。しおりが2本付いていて、裏表紙の内側にはポケットもある。
さらには、ゴムバンド製のペンホルダーまでついていて、なにかと至れり尽くせりな手帳である。これは日本で展開しても人気が出るのではないかと思う。
フエルトカバータイプ 12ユーロ
ホワイト(合皮)タイプ 17.85ユーロ
ファイルでも面白いものがあった。二つあったのだが、いずれも「ダブルファイル」というべきものだ。ひとつは表紙のデザインに惹かれてしまった。きっとデザインステーショナリーというよりも、ドイツの人が普通に使っているものなのだと思う。
肩肘はらないふつうの格好良さというものがある。内側にはメタル製のファスナーがある。それが2カ所も付いている。この手のファスナー綴じは下の方に綴じ込んだ書類の取り出しが少しばかり手間どる。
2カ所に分けて綴じれば、書類も取り出しやすさも少しばかりアップするかもしれない。もう一つのファイルは書類を細い溝に滑りこませて綴じるタイプだ。
観音開き仕様になっていて、やはり、こちらも2カ所で綴じられるようになっている。
クライアントへ渡す提案書などに使えそうだ。
たとえば、提案書と見積もり書など、違う書類を渡す時にはきっと便利だ。
メタルファスナータイプ 1.85ユーロ。
溝で綴じるタイプ 5.35ユーロ。
これはファイルの綴じ具のみというアイテム。日本には「とじ紐」というものがある。これは大きなくくりではその仲間のひとつと言えそうだ。
1枚のシートにゴムバンドそして台形のプレートが4セットある。プレートとゴムバンドは簡単に取り外せるようになっている。
使い方は綴じたい書類にパンチで2穴を開け、ゴムバンドを下から通す。上からゴムバンドの端っこを出す時に台形のプレートごと留めてしまう。
このままではゴムバンドがダランと緩んでしまっているので、裏側のゴムバンドをグイと表側に引っ張って、台形プレートの頂点に引っ掛ける。
こうするとゴムバンドの緩みがなくなりピタリと綴じられる。ひもよりも、ゴムの伸びがあることでページの開きもよくなる。表紙などない分、薄く仕上げられ、閲覧性にも優れているという綴じ具だ。
その名も FLEXBAND。
4.95ユーロ。
日本でもたまに見かけるドイツのラベルブランドHERMAのナンバーシールをしこたま買ってきた。最近のマイブームでノート代わりに使っている月光荘スケッチブックの表紙に今何冊目かを表すナンバーシールを貼って楽しんでいる。ノートの表紙は、人間でいうところの「顔」の部分。ノートは普段持ち歩くことが多いので、この表紙には結構気を使う。以前は、手書きをしていたが、字が汚い私の場合はなんとも様にならないものになってしまっていた。
せっかく気に入ったノートを使っていても表紙ひとつで気分は半減してしまう。そこで、今は手書きをせずにナンバーシールだけ貼るという方法をとっている。ナンバーシールを貼るだけでも、ノートの顔を個性的に演出することができる。これまでは、水縞さんのビックナンバーシールをずっと使ってきた。
HERMAのものは、「ヘルベチカ」のようなシンプルなフォント。
月光荘スケッチブックに貼ってみたら案の定、しっくりときた!水縞の時とはまた違った顔になった。
気分で使い分けてみようと思う。
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