文具で楽しいひととき
ISOT2011
国際 文具・紙製品展レポート
今年も7月に開催された ISOT(国際文具・紙製品展)。
今年で22回目だという。この「22」という数字にちょっと感慨深いものを感じてしまった。というのも私が新卒として、当時のリードジャパン社に入社して初めて配属されたのが
ISOTの事務局だった。ちょうどその時がISOTの第1回目。
つまり、社会に出て私も22年目を迎えたということになる。あぁ、私ももうそんな年になったのかと、思ってしまった。
さて、今回の ISOTでは、ペンメーカーの出展がめっきりと減ってしまっていた。ペン好きの私としては少々寂しい気もしたが、それでも見所にはことかかなかった。初日の10時頃から閉館ぎりぎりの「蛍の光」(本当に館内に流れるんです。。)が聞こえてくる時間までミッチリと取材を行った。最終的に取材したブースは全部で、12社。
今回もいつものように私が気になったアイテムをレポートしていきたいと思う。
■ デザインフィル
今回もメインの入口近くに、大きなブースを構えていたデザインフィル。
昨年は二階建てのような構造だったので、まるで展示会場に出来たショップという感じだったが、今回はうって変わってオープンな雰囲気。そんな中にも、さすが紙にこだわるデザインフィルだなと思ってしまったのがブースの中を区切る白い壁。
これが向こう側の様子が見える作りになっていた。
使ってる素材は紙ヒモだという。なんと3kmもの長さのものを用意して、それを巻き付けていったという。この紙ヒモには、和紙が使われていて、とてもやさしい風合いが壁面の全体から伝わってきていた。今回のデザインフィルのテーマは「新しい価値創造」。このブースの作りからしてまさに紙の新たな価値を見た気がした。
では、早速商品の紹介を。まず、「MDノート」プロダクトに新しいアイテムが加わっていた。
「MD ペーパーパッド」というもの。サイズは大きな A4そして A5、A6スリムの3種類。中でも A6スリムはスリム加減が半端ではなく、A6というよりも情報カードといった方が似ているような気もする。
パッドタイプということで「MD 用紙」を糊で綴じただけのシンプルな作りになっている。
「MD ノート」のように表紙がないので、より無垢らしさに溢れているとも言える。この糊のつけ方がユニーク。普通のパッドは上側だけに糊づけを行っているが、これは上だけでなく横も一箇所だけ糊付している。あえて2箇所を糊付けしたのは、書く時の安定感を良くするためだという。
確かに書き味の良さを左右するものに「安定感」というものはとても重要。いくらいい紙を使っても、書いている紙がグラグラと動いてしまってはいい書き味は得られない。これは紙に限らず、ペンでも言えることだ。今回の「MD ペーパーパッド」では1ヶ所だけ角が落とされたような格好になっている。
これは、2辺糊付けしているので、紙をめくる際のめくり口が1箇所しかなく、それがすぐわかるようにという配慮のためだ。
別売りとなるが、MDF製の専用トレイもある。
こうしたトレイにセットした時に、先程のめくり口はより威力を発揮してくれる。「MD ペーパープロダクト」ではもう一つ新しいものがあった。
「MDノート ライト」というものだ。この特徴は綴じが中ミシンになっている点。
雑誌などでは 「中綴じ」と言って綴じの真ん中のページをホチキスでとめる製本があるが、これはその部分をまさにミシンで縫い込んだようになっているもの。「MD ノート」の白い紙面にザックリと縫い込まれたミシンの糸が意外にも合っていた。
紙面の無地、横罫線、方眼ごとにそれぞれミシン目の糸が違う色になっている。48ページとページ数も少なめなので、まさにライトに携帯して使うことができる。先程のパッドタイプでもそうだが、今回の「MD プロダクト」の新作は、「MD 用紙」という紙をより気軽に使えるものになっている。「MDペーパープロダクト」もノート、ダイアリーそして今回のパッドなども仲間入りして紙製品のほぼ全ラインナップを網羅した感がある。
あと個人的にぜひ作って欲しいのは「MDコピー用紙」。コピー用紙というと、価格の安さばかりを売りにしているものが多い。
上質な紙を使い、万年筆での書き味にもこだわったハイエンドタイプというのもあってもいいのでは、と思う。特に私は、朱入れ校正には、赤インクをいれた万年筆を使っているので、そうしたものがあったらすごく助かる。しかし、私以外に使う人はあまりいないかもしれない。。
その「MD プロダクト」のすぐ隣には「APAN WORKS」というコーナーがあった。ここでは日本各地の伝統的な技とデザインフィルとの商品を組み合わせたものが展示されていた。
今回、デザインフィルの商品として使われていたのが「CB定規」という30年のロングセラーを誇るアルミ製定規。「CB」とは、もともと「コーヒーブレイク」という意味で、これはアルミの定規に温かな風合いのシダーという木材がはめこまれているもの。その木の部分を日本の伝統的なものに置き換えたものがいろいろと展示されていた。
例えば三重県松坂の木綿、神奈川県箱根の寄木、大分県別府の竹などなど。
中でも私が気に入ったのは、富山県高岡の錫(すず)。
ちょっとザラザラとした質感で、アルミのマットと対照的にキラキラ感が実にマッチしていた。手にすると、ひときわズシリと重みがあった。
それから福岡県大川の畳というのもぜひ使ってみたいと思わせる定規だった。
見てるだけで涼しげになってくる。横から見てみると畳のイグサの一本一本がキレイに並んでいるのが見える。
畳は指で押さえた時のちょうどいいグリップにもなりそうだ。
* 参考出展
そして「エマージェンシーメモ」というものもあった。
以前、私はデザインフィルのカードメモのことを、緊急時に使うメモにちょうど良いと思ったので、勝手に「エマージェンシーメモ」と呼んでいたが、本当の「エマージェンシーメモ」がお目見えしていた。
これは、万が一、事故などに会ってしまった時のために、自分の緊急の連絡先や健康情報、加入している保険などを書きとめておくものだ。中の紙には水に強いユポ紙が使われている。
サイズはカードメモと同じカードサイズなので、財布などに入れて携帯しておくことができる。万が一のときに備えて、発売されたら家族全員分を用意ししておこうかと思う。ブースの一角には企業への提案コーナーがありそこで面白いものを見つけた。デザインフィルのロングセラー商品である「ダイヤメモ」。まるで棒グラフのように色んな長さのものが並んでいた。
広報担当の中村さんに横に立ってもらったが、一番長いものだと1メートル以上もあった。一方、リング一つだけで綴じられていた豆ダイヤメモとでも言えそうなかわいらしいものまであった
。
具体的にこれをどう使うかという点はまだわからないというが、こういうこともできるという提案がなされていた。
■ リヒトラブ
リヒトラブのブースでは、スケジュールファイルをはじめ、ツイストリングノートなど様々な商品が並んでいた。そのいずれもがカラフルなものばかり。ひととおり商品を見た後、そのすぐ後ろのブースに回ってみると、一転してブラックを基調にしたシックなブースがあった。
リヒトラブのブースとは完全に壁で区切られていたので、てっきり別の会社かと思いきや、ここもリヒトラブのブースだった。ここでは、初発表となる「THE DESIGN MIND COMPANY」というブランドの商品が展示されていた。
と、そこにMOLESKINE そっくりなノートが展示されていた。
中を開けるとリングノートになっていた。実はこのリングは、リヒトラブが最近推し進めているツイストリング方式。
しかし、これまでのツイストリングとは少々違っていた。具体的にはリングの外し方が従来のもと違う。これまでは、ノートの両端をつまんで斜めに引っ張って外していたが、今回のノートにはそもそも背があるので、引っ張りたくても引っ張ることは出来ない。ではどうするかというと、リングの下にあるボタンを押せばいい。
そこを押すと、すべてのリングが一気に開く。
閉じるときは、これまで通りジッパーのように一つ一つのリングをパチパチと手動でとめていく。リフィルには、無地、横罫線、方眼そしてマンスリーダイアリー、トラベルやウェルネス、レシピといったライフスタイル系もあった。
自分スタイルの一冊が作れるというのが特徴のようだ。個人的には、もう一つのリングノートタイプの方がとても気になってしまった。
こちらはいわゆるパッドスタイルのリングメモ。それなら従来のツイストリングメモと同じではないかと思ってしまうところだが、それがちょっと違う。私が最も気に入ったのがリングの経が大きくなっている点。
あらかじめ60枚セットされているが、もう少し足すことができる余裕があった。
こちらのツイストリングも先程と同じようにボタンをプッシュする方式。
方式は同じだが、こちらのリングパットの方が俄然開けやすい印象だった。開け方は、リングにあるボタンを上側にして、そのままリングの両端を押し込む。
それだけでリングはパカッと開く。メモを開いて両端を引っ張るよりも、こちらの方が断然開けやすい。これまでのツイストリングノートでは、引っ張ってリングを開けていた。一方、このリングでは、ボタンを押して開けるというもの。とは言え、実はリングのつくり自体は同じだという。押し込むことで、かみ合っているリングを外す仕組みになっている。
私は TODO すべてを1冊のメモパッドに書いてまとめた「TODO 全集」というものを作っているが、これはその一つの候補として本格的に考えてみる価値がありそうだ。
また、今回、新たに専用パンチも登場していた。資料などを綴じこみたいときに、これは便利だ。
■ キングジム
キングジムブースではスマートフォンと連携できる「ショットノート」、そしてポメラやマメモなどのデジタル系ステーショナリーがメインに展示されていた。
広報の方に今回の ISOTで初めて発表した新しいものはありませんか?とお聞きしてみると、まずこれです、と見せていただいたのが「スグオシ」というものだった。
これは、シヤチハタ社とのコラボ商品。
商品としては、自動で日付設定してくれる日付印ということになる。
これまで日付印は、毎朝自分でダイヤルをまわし日付を合わせなくてはならなかった。この「スグオシ」には、ハンコをセットできる本体があり、そこに入れておけば、あとは自動で日付をカチリと変更してくれる。
ただし、年を合わせるのは手動。年は文字どおりで年に一回なので、これは手でやるしかない。ちょっと残念だったのは、シヤチハタ社十八番の浸透印でなかったところ。つまり、スタンプ台でインクをその都度つけなくてはならないものだった。でもまぁ、日々の日付合わせから解放されるだけでもこれは便利であると思う。
キングジムと言えばテプラだが、テプラにも新しいものが登場していた。
最大で10センチ幅の太いラベルが作れるというもの。
これまでのファイルのインデックスというよりかは、案内看板やサインとして使えるというのが今回の特徴。気が効いているのは「水平器」もあらかじめ付属されていたところ。壁に貼る時に斜めにならずにすむ。
ファイルでもちょっとユニークなものがあった。なにがユニークかと言うと一冊のファイルに1300枚もの紙が綴じられるという超特厚ファイルであるという点。
綴じ具はキングジムでおなじみのどちらがからでも綴じられるパイプ式ドッチファイル。
さすが1,300枚を入れると重くなるので、背にはガッチリと握れる取っ手がついている。
プラスチック製で強度的に大丈夫だろうかと心配したが、実際に持ってみたところ全く不安定さはなかった。
何も1,300枚を一つにまとめなくても、ファイルを2つ3つと分けでもいいのにとも思ってしまうところだが、一つのプロジェクトを1冊にまとめておくメリットは意外と大きい。何事も情報は1ヶ所にした方が探すときも確実だし、誰かにあのファイルを持ってきてと頼んでもどっちですか?と迷うこともない。しかも、2冊のファイルを買うよりも価格的にもお手軽なのだそうだ。
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