文具で楽しいひととき
ゼブラ
arbez piirto
そもそもペンというものは、長さにして13~14cm 、幅が1cm たらず。この限られた空間の中で、各社独自のデザインを追求している。この空間でできることは、もう大方やり尽くされたのではと思っていたが、これらのペンを見たらそんな考えは、キレイに吹っ飛んでしまった。
それがこのゼブラの arbez piirto。
「アルベス ピールト」と読む。ちなみに、「arbez」は「ZEBRA」を逆さにしたもの。「piirto」は、フィンランド語で図形などを「描く」という意味だという。
これまで何本ものペンのデザインを言葉で説明してきたが、今回はうまく表現できるか正直ちょっと自信がない。というのもこれは、「まるでの○○ようだ」という○○に相当するものが見当たらない。それくらい斬新なデザイン。
いつも私がペンのデザインを文章にする時は、自分がミクロの決死隊(ちょっと古いか…)くらい小さくなって、そのペンの上を歩いたり、よじ登ったりして探検しているイメージ。
では、ひとつ今回のアルベスを探検してみようと思う。「アルベス」と「探検」というとふうに書くと、なんだか本当にどこかの山に登るみたいだ。アルベスには、3種類のペンがラインナップされている。油性ボールペン、シャープペンそして蛍光マーカー。では、まず油性ボールペンから。
このペンは、円柱状であり、三角軸でもあり、さらにはヘラ状にもなっている。
■ キリをイメージしたという
これらの要素が1本のペンの中に、上手い具合に結びつき合って構成されている。今回のいずれのペンも錐(きり)をイメージしたというが、個人的にはあまりそういう風には見えない。ゼブラの方にお聞きしたところによると、遥か昔の人が文字を書くときに使っていた鉄筆のようなものをイメージしているという。
鉄筆というものを見たことはないが、なんとなくそちらのイメージの方が近いように感じる。今回のデザインはフィンランドの若手デザイナーによるものだという。
ボールペンとシャープペンには、ホワイトとブラックのボディカラーがある。特にホワイトは、まさしく真っ白でその中にアクセントとして三角マークがある。この三角マークの色は3タイプあって、ブルー、グレーそしてレッドがある。
このデザインが何とも北欧的。いつもは、ペンの特徴的なところを捉えて、そこからご紹介していくのだが、このペンには、それが幾つもある。
それでは、まずパッと目についたグリップからはじめてみることにする。グリップの部分をよくよく見てみると、「私たちは別パーツです!」宣言するかのように1mm くらい離れている。
ここがツイストできるようになっていて、ボールペンが繰り出される。隙間があることで、そこがツイストするというのが直感的にわかるデザインになっている。ちなみにこのツイストは片側方向にしか回らない。
この隙間の部分がボディの中で一番太くなっていて、ここを頂点にして、ボディの両端に行くに従い、だんだんと細くなっている。
ペン先側は、ごくごく普通に細くなっているのだが、その反対がちょっとユニーク。
■ ボディより一段低いクリップ
だんだんと細くなり、少し行くと、いきなりかガクンと細くなり、丸軸だったものがいつの間にやらヘラ状に変わっているのだ。そして、そのまま折り返す様にして、クリップが形づくられている。クリップというとペンのボディから張り出しているものだが、これは逆に凹んでいる。
しかも、クリップはボディと一体成形。これで果たしてクリップとしてちゃんとはさめるのか不安を感じる。試しにシャツの胸ポケットにさしてみた。ガッチリとまではいかないが、まずまずのフィット感のある付け心地になっていた。
この独特なフォルムを握ってみると、とても快適。独特な握り心地があるかと思っていたので、少々拍子抜けしてしまった。
この快適な握り心地の秘密は、グリップの加工によるものだった。ここが三箇所だけフラットにカットされている。
「カット」と表現したが、まさにナイフなどでスパッとカットしたように3ヶ所だけクッキリとしたフラット面になっている。フラットといえばもう一つ、ペン先の反対側もフラットな仕上げ。ここは斜めにカットされている。
書き心地はプラスチックボディということもあり、軽快。ボールペンのインクの色は3色展開。その見分け方の基本は、ボディの三角マークの色を見ればいい。たとえば、白軸の青マークは、青インク、赤マークは、赤インク、グレーマークは、黒インク。ただひとつだけ例外があって、ブラックボディには、青の三角マークがあるが、これは黒インクとなっている。
一つ希望を言えば、ゼブラで最近イチオシの「スラリ」のリフィルであると、さらに嬉しい。
■ シャープペン
さて、ボールペンの探検が終わったところで次はシャープペン。こちらも大いに斬新なフォルムをしているのだが、先程の油性ボールペンの後だと、なぜかおとなしめのデザインに見えてくる。
ボディフォルムの基本は先程のものがベースになっているようだ。
グリップに隙間があるが、こちらは別パーツにはなっておらず、回転もしない。グリップは、やはり三面カット方式でここを頂点にして両端に繋がるラインはシャープペンの方はとても素直なラインになっている。と思いきや、ノックボタンが面白い。
まるでノックボタンをどこかに忘れてきてしまい、その中身があらわになっているのでは、と思ってしまうスタイル。しかし、ここが鮮やかなオレンジになっていてホワイトそしてブラックボディの中でとても映えている。このノックボタンを上から見ると、上下左右の4ヶ所が深く掘りこまれていて、小さいながらもとても立体感のあるフォルム。
見た目にも、そして、指をかけた時の指がかり的にもいい。書き心地は、先程の油性ボールペンと同じグリップになっているので、基本同じ印象。ただ、いくつか違うものを感じた。まずひとつが、三面カットの位置。ボールペンの時より、ややボディの中央よりにある。
これにより、握り心地が微妙に違う。ペン先側を握ってペンを立てて書く、または、やや中央を握ってペンを寝かせるといったことも可能。
もうひとつは、筆記時のペン先の眺め。これがとてもスッキリとしていていい眺めをしている。
と言っても、製図用シャープペンのようにスリーブが特に長いという訳でもない。なぜだろう。。これはスリーブ、そして口金さらにはグリップに至るラインがほぼまっすぐになっていて、一般的なシャープペンよりも、かなり細身になっている。
このことがいつもとちょっとが違う眺めに影響しているようだ。
■ 蛍光ペン
そして、最後の山、蛍光ペン。
ゼブラといえば蛍光ペンの代表的なメーカー。引き出しは開ければ、グレーのボディのゼブラの蛍光ペンが1本や2本は入っているのではないだろうか。こうしたデザインペンに蛍光マーカーもラインナップしているのがゼブラらしい。蛍光マーカータイプはキャップ式になっていて、ボディはやはりこれまでのものがベースになっている。
しかし、違うのは蛍光マーカーだけは、ボディが少し太めになっているところ。グリップの三面カットは、蛍光マーカーを引くときに向きがピッタリと合うようにデザインされている。ただ、三面カットは、ある意味、どうにでも握ることができてしまう。そのために、後軸の斜めカットが便利。この斜めカットとペン先の斜めカットが同じ向きになっている。ここを目印にすれば OK 。
ちなみに外したキャップは、この後軸にセットもできる。
さてさて、三つの山もすべて無事登りきることが出来た。同じボディデザインをベースにしながらもシャープペン、蛍光ペンならでの用途を考えた気配りがなされているのを感じた。そして、今回のアルベスは、なんと価格はすべて各105円だという。こんなに素敵なデザインが105円で手に入るというのは、実に喜ばしいことだと思う。
■ 記事作成後記
アルベスのボールペンタイプにゼブラのスラリ リフィルを入れてみました。しかし、残念ながらスラリのリフィルがやや太く、アルベスのボディに収めることはできませんでした。
ゼブラ アルベス ピールトは、こちらで販売されています。
* 関連コラム
「ナナフシのようなペン」トンボデザインコレクション Zoom707
「ドイツデザイン 万年筆」Duller 万年筆 by ディートリッヒ・ルブス
「日本の心を持ったラミーペン」ラミー ノト(noto)
文具コラム ライブラリー
pen-info SHOP