文具で楽しいひととき
シヤチハタ
アートライン ライトタッチ
多くの文具メーカーでは毎年、総合カタログというものを出している。中にはタウンページくらいの厚さで、上下巻のように分冊されているものまである。私はタウンページは見ないが、この手の総合カタログを好んでよく見ている。
今やインターネットでメーカー公式サイトを覗けばほぼ全商品は簡単に見られるのだから何もそんな重いものを見なくてもいいのではないかと、多くの人はそう思うことだろう。しかし違うのである。紙のカタログの良さはなんと言っても「パラパラ」と見ることができる点だ。
インターネットであれば、あらかじめ目当ての商品がある時は、検索ですぐに見つけることができ、それはそれで大変便利なことである。しかし、私の場合は特に何の目的もなく、ちょっとそこまで散歩してくるね、という具合にブラブラ(正式にはペラペラ)と見ることが多い。
この気軽に見るという点では、やはり「紙のカタログ」の方が勝っている。こんな感じでペラペラとめくってみていると、思わぬ文具に出くわすことがある。
大型の文具店でも、全メーカーの全商品を扱っている訳ではないので、総合カタログを見ていて「ほぅ、こんな文具があったのか。。」と、初めてのものに出会うということも少なくない。
このシヤチハタ アートライン ライトタッチ0.4もそんなペラペラ散歩で目にとまったものだ。このペン、文具店ではなかなか見つけることができず、先日ようやくの事で入手することができた。まず、私の目を釘付けにしたのは、このデザイン。
力一杯デザインしました、というよりかは、機能性を追求していたら自然とこういう形になりましたといういい意味での肩の力が抜けた素朴な格好よさがある。それは特にキャップの部分。
両サイドにはドット状の小さなくぼみが等間隔で配置されている。キャップの全周囲ではなく、あえて両サイドだけ。どうやらこれは、片手でキャップを外すときの指がかり、つまり滑りどめのようだ。確かに、ここに指を添えるとキャップが開けやすい。
そして、このドットとピッタリと息を合わせるようにクリップもデザインされている。丸いような、それでいて角張っているようななんとも例えづらいユニークな形だ。
横から見ると、大小二つの山が並んでいるひょっこりひょうたん島のようである。なぜか大きい島の半分以上がえぐり取られている。このえぐり取られている部分にもちゃんと意味がある。これも、やはりキャップの開けやすさ。ここのくぼみに親指を添えると、ピッタリとフィットする。
このまま上に押しあげればいい。そうしてキャップを開けると白いペン先が現れる。このペン先がまた面白い形をしている。
■ 先端がヘラ状に平べったくなっている
ちなみに、この白い部分はプラスチックで出来ている。その先端は、みずみずしくインクで染まっている。
パッケージには「ソフトな書き味」とあったので、きっとこのプラスチック製の平べったい部分が万年筆のようにしなるのではないかと期待に胸が膨らむ。実際書いてみる。
これが全くしならない。少し強い筆圧で持って書いてもびくともしない。「ソフトな書き味」とは、一体どういうことなのだろう。そこで、こんどは逆に筆圧を軽く書いてみる。すると一転、ペン先が、紙に触れた時のタッチのやわらかさというものが感じられる。
ペン先のコシは硬いのに先端のタッチだけはソフトな印象。ソフトはソフトでも、これはしなりではなく、タッチだったのだ。これはなかなか面白い書き味だ。
こうしたプラスチックのペン先を持つペンと言えば、ぺんてるの「トラディオ プラマン」ならびに「プラマンJM20」がある。「プラマン」もやはり平べったいペン先をしているが、書き味としては、ペン先はやわらかめ。そして、ペン先のインク染み渡っている部分がやや広くなっている印象。
書くときにそのしなりを活かしたりペン先をやや寝かせて接している面を広くとることで字幅の太さが結構自在に変えられる。筆文字のような筆跡を生み出すこともできる。
一方のライトタッチの方は、ペン先が硬めで、ペン先の中でインクが染み渡っている部分がやや小さめということもあり、字幅にさほど変化は見られない。
筆跡の表現力は少ないが、細かな文字を書き続けるのには適しているかもしれない。ライトタッチの字幅はカタログ値では0.4mm。0.4mmと言えば、シャープペンの芯よりも細く、ゲルインクボールペンで言えば、やや極細の部類に属するといったものだ。
そんなイメージを持ちつつ書くと、ちょっと違和感を覚えるかもしれない。実際はそうしたものよりもやや太め。
とはいっても、5mm方眼の中に文字を書くことも可能なので、よく使っている6~7mm 罫線のノートでの普段使いペンとしても十分使えそうだ。
普段使いにいいのはペン先だけでない。ライトタッチのグリップは 握りやすいように三角軸スタイルになっている。
クッキリとした三角軸というよりかは、いくぶん凹んでるところもあり、ちょうどラミーサファリのグリップをもう少し緩やかにしたようなイメージといったところだ。
紙の上でこのライトタッチをまさにライトなタッチで走らせてみると、シャラシャラと小気味良い音を立て、スムーズな書き味が楽しめる。
文字だけではなく、このペンでイラストやスケッチ等を描くと味わいのあるものができそうな気もする。
■ 記事作成後記
*白いペン先から出ているインクの色が付いている部分つまり、書ける部分ですね。それがあまり長くないためか、余りにもペン先を寝かせて書くとインクのカスレが多少出てきます。
*水性インクということで、紙の上にペン先を置いたまま、しばらく考えごとなどしているとジワリジワリとインクが拡がって、紙の裏に抜けることがあります。
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