文具で楽しいひととき
ニューコン工業
パーソナルシールプレス
文字を書くのも、調べものをするのもなんでもパソコンという今やデジタル全盛時代。そんなデジタルの対極的な存在であるアナログの文具。身の回りのデジタル化が進めば進むほど、逆に文具熱が高まっているという人が私の周りにはとても多いような気がする。
万年筆や書き心地のいい紙質のノートなどなど文具にはこだわる部分も幅広く、しかもそのひとつひとつがまたとても深いということもあり、知らぬ間に、どんどんとその深みにはまってしまうという危険もあったりする。
■ こだわりの行きつく先は「あつらえ」
そんな文具のこだわりをつき詰めていくとそこには「自分だけのものをあつらえる」というところにたどり着く。背広で言えば、それまでは、いわゆる既成のつるしだったものを自分の体にピッタリと合うものをオーダーにするという段階である。
「あつらえる。」→「高級」→「私には手が出せない。」従って→「指をくわえてただ眺めているだけ。」という確固たる図式がこれまで私の頭の中を占領していた。しかし、今は一部の文具では「あつらえる」ことの敷居がぐっと下がってきている。
このパーソナルシールプレスもそうだ。
「パーソナルシール」という表現よりも、「エンボッサー」というふうに言ったほうが、わかりやすいかもしれない。凹凸のあるメタル製の刻印でもって紙にプレスをして立体感溢れるマークを作り出すものである。
このオリジナルマークが23,700円+tax~つくれるということで、私も一つをオーダーしてみることにした。このサービスを行っているのは、ニューコン工業という会社。その社名に馴染みはないかもしれないが、その会社が作っているものはきっと多くの人が一度や二度、目にしていることと思う。
例えば、車の免許証やパスポートで期限が失効したときに、開けられている特殊な模様の穴。
これは、改ざんを防止するためのもの。その特殊な穴を開ける機械を作っているのが、ニューコン工業なのだ。その他、学校の生徒手帳のエンボスマークなどとにかく紙状のものに穴を開けたり、マークをつけるということを専門にしている会社である。
そして、業務用だけでなく、我々個人のために、シールプレスを作ってくれるサービスを始めた。シールプレスの本体はちょっと大きなデスクトップタイプとコンパクトなハンディタイプの2種類がある。
私の机はそれ程大きくないので、小さめのハンディタイプを選んでみた。ちなみにどちらのタイプでもつくれるシールプレスの大きさは同じ。シールプレスを頻繁に、それこそ1日何十回もプレスするという方の場合はデスクトップタイプの方がいいかもしれない。デスクトップタイプは、大きいというだけでなく、体重を使ってハンドルを押すことができるので、大量の作業に特に向いている。
■ シールプレスをオーダーした
では、どのようにオリジナルマークをオーダーするのか。これには専用のオーダーフォームがあり、それを基本埋めていけばいい。
使用できる文字はアルファベットや数字はもちろん、さすが日本の企業だけあって漢字までしっかりと対応している。こうした文字だけでなく、いわゆるマークも OK。
ユーザの中には、これまで家紋をオーダーするといった人もいたという。著作権を侵害しない限りは基本どんなマークでも受け付けてくれる。マークの場合は、印刷物などの版下やパソコンで作ったデータをニューコン工業社へ送る。こうした完全版下があれば、先程の基本料金の中で作ってくれるというのだから嬉しいではないか。
ちなみに、手書きのデザインの場合は、デザイン料として別途費用がかかってしまう。このオーダーをする時に一つ注意すべきことがある。それはマークの位置。
どういうことかと言うと、紙にシールプレス本体を挟んで、いざプレスしようとするとき四角い紙のどこから差し込み、そのマークの向きをどうするかということである。
いわゆるレターヘッドのように紙の上にマークをつけるのか、それとも紙の右下に付けるかであらかじめ作るべきマークの向きは違ってくる。残念ながらこのマークは一度作ってしまうと変更はできない。よくよく考えて、決めなければならない。私は検討の末、一番シンプルなレターヘッドタイプにした。
そうそう、今回私は自分のロゴマーク「pen-info.jp」をシールプレスのマークにすることにした。
しかし、このマークは、もともと横長になっている。シールプレスに使えるマークのサイズは直径25ミリもしくは30ミリのいずれかである。つまり、私のロゴのように横長だと上下に余白ばかりができて肝心のマークが小さくなってしまう。そこで、急きょマークを正方形になるように変更した。
少々違和感があるが致し方ない。オーダーフォーム、そして新たに作った正方形のロゴデータを送って申し込み完了。待つこと2~3週間程、小さな小包が届けられた。
箱からシールプレスを取り出し手にしてみる。商品名にコンパクトとはあるが、たっぷりと鉄が使われているのであろう、ズシリとくる。
届けられた状態ではシールプレスの部分がロックされいて私のマークが見えないようになっている。そこで、ハンドルの上にあるロックを手前にスライドして解除する。
するとプレスが長い眠りから覚めたように口を1cm 弱程開き、その隙間から私のマークが見えてきた。上は鉄製の凹版に、下は樹脂らしきものによる凸版になっている。
たしかに、私がオーダーしたあの正方形のマークがそこにある。はやる気持ちを抑えきれず、机の上にあったメモ用紙をつかみり、初プレスを試みることにした。
1回深呼吸をし、気持ちを落ち着かせハンドルに手をかけ優しく、それでいてギュッとやや強めに握り締める。「恐る恐る」メモを引き抜いてみる。なぜ「恐る恐る」かと言うと、これにはちょっとした経緯があった。
実は私のマークは結構細かな部分もあるので、ちゃんとマークができるか少々心配ですと、ニューコン工業の方に事前に言われていたからだ。しかし、私としてはマークを四角形にし、やるべきことはすべてやった。あとは運を天に任せニューコン工業社の職人の方にすべてをゆだねるしかなかった。
そんな思いが走馬燈のように流れ、まるでスローモーションのように私はメモを取り出した。そこには、はっきりと私が作ったあのマークが形作られていた。
■ 立体感あふれる刻印
心の中で小さなガッツポーズを作る。「pen-info.jp」の文字はしっかりと判読できるし、万年筆のペン先までもがきれいに表現されている。マークを指でなぞると細かいながらも凹凸がたっぷりと感じられる。紙の裏面を見てみると、当然そこには凹んだマークがある。
こうした裏側を見るのも、シールプレスならではの楽しさである。ほっと一安心するのも束の間、愛用の便箋や名刺などに次々にプレスしていった。
【名刺に刻印】
【便せんに刻】
【ポスト・イットに刻印】
基本どれも成功。ただ印象としては薄い紙程美しくプレスされているようだ。やや厚い名刺などの時は、マークの輪郭がわずかではあるが、ぼんやりとする感じだった。しかし、それほど気になるものでもない。
これから色々な身の回りの紙にプレスをしてそして、まわりの人たちに自慢しようと思う。その時は、まず完成品であるプレスした名刺などを見せ、実はこれで作ったんだと、シールプレス機本体も持って行くつもりだ。
そんな私の気持ちを想定してか、持ち運びができるように専用のソフトケースまで付属されている。
■ 記事作成後記
*刻印の部分は、取り外しが出来るようになっています。つまり、本体がひとつあれば、刻印を入れ替えて使うことも可能ということです。ちなみに、刻印は、デスクトップタイプ、ハンディタイプで、それぞれ違うものとなります。
ニューコン工業 パーソナルシールプレス ハンディタイプ
*関連コラム
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「立体感のある刻印を愉しむ」ミドリ エンボッサー
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