文具で楽しいひととき
グリーンウイッチ
C.COVER
昨年末、上海に出張したときに、出張取材ノートとして、ファイロファックスのシステム手帳を持って出かけた。この一冊だけでホテルの情報から取材の記録まですべてを通しきった。
取材ノートとしては、以前ご紹介した MOLESKINE のソフトカバーにプレスマンという組み合わせがあったのだが、今回は取材に加えて、出張というのが加わったのであえてシステム手帳にしてみた。というのも、上海出張は今回で2回目。
1回目の時にシステム手帳に書きとめておいた情報を今回も有効に使えるという理由からだ。例えば、よく使う中国語会話集やガイドブックからコピーした地下鉄やショップ情報といったものだ。
こうしたものを引き続き使うにはやはりページの差し替えが自由にできるバインダー式のシステム手帳がとっても好都合。来年また行くときには、これらの中から必要な情報だけを取り出してファイリングすればいい。私にとってシステム手帳はスケジュール管理というよりも、こうしたある特定のデータベース管理の活用にとても役立っている。
そんな差し替えができるありがたみをしみじみ感じていたところ面白いメモパッドと巡り会った。これは、システム手帳のように中の差し替えが自由にできるというメモパッドなのである。イタリア生まれのグリーンウイッチ社のC.OVERというものだ。
■ 3冊のメモをセット
思わず「カバー」と読んでしまいそうなところだが、正式には「シー・オーバー」と呼ぶ。イタリアらしい鮮やかなカバー。そのカバーの中には3冊のメモパッドが綴じられている。
差し替えが自由自在と言っても、システム手帳のように1ページずつと言うわけにはいかず、 メモパッドごというスタイルになる。サイズとしてはロディアでいうところの下から2番目の12番相当。
厳密に言うと、C.OVERの方が、わずかに頭ひとつ長い。その差1cmといったところ。これは、ロディアにはない差し替え可能な綴じ部分、システム手帳でいうところの綴じ具にあたる部分があるためだ。ちなみに中の筆記スペースはロディアよりも1.3cmほども縦方向に広くなっている。
と言うことは、つまりC.OVERは筆記スペースを小さくすることなく差し替え可能な綴じ具をコンパクトに収めているということになる。では、3冊ものメモパッドを一体どのようにして綴じ込んでいるのだろう。その正体を探ってみることにしよう。外観上綴じ具らしきものはは見当たらない。メモパッドのページめくってもなかなかその正体を見せない。
■ ゴムでメモが綴じられている
しばらくページをめくっていくとちょうど真ん中あたりで、1本のゴムバンドが姿を現す。
実は、このゴムバンドが綴じ具になっていたのだ。ゴムバンドといっても我々がよく使うワッカ状のものではない。それは一本になっていて、両端がネジの頭のようにやや大きく張りだしている。
カバーの側にはこのゴムのでっぱりを固定できる溝があり、そこにゴムバンドを引っかけて留めるという仕組みだ。
このユニークなゴムバンド方式を実際に色々といじってみたところ、これには一長一短があるようだ。まず一長から。ゴムという細いものを綴じ具にしているので、先ほどもご紹介したように綴じ込み部分をコンパクトにしているということがまずあげられる。
メモパッドは、それこそ胸ポケットに入れて軽快に持ち歩くという使い方が多いので、このコンパクト化という発想はとても正しいと思う。また、この小さな綴じ具のため、ページを開いたときの見開き性がまずまずという点もある。
差し替えが効く綴じ具と言えば、リングバインダーが主流だが、それに比べると書き込みできる紙面がたっぷりと確保できている。よく綴じ具が邪魔で筆記しにくいということがあるがこのゴム方式ではその心配はいらない。そんないいことずくめのようなゴムバンド方式にも気になるところもある。
それはちょっとした勢いでゴムが外れてしまうという点だ。先程、見開き性がいいと申し上げたが、これはあくまで180度全開にした状態でのこと。リング式のようにさらに360度近く折り返すと、ゴムが耐えきれずにほぼ確実に外れてしまう。大切なメモが外れてしまう危険性があるというのは、正直ちょっと気になるところだ。
そんなことを想定してか替えゴムがしっかりと別売りされている。以上のような一長一短である。次に、メモパッドを入れ替える方法をご説明しよう。先ほどのようになにかの拍子にゴムが外れるのをひたすら待つというものではもちろんない。
まず、メモパッドを取り外す場合から。はじめ私はゴムバンドの端っこを指先でつまむもうとしていた。しかし、ゴムの方も結構ピッタリとはめ込まれているので、なかなか外せない。色々といじっていて気づいたのだが、このバンドを取り外すには、端っこではなく、真ん中のゴム紐のところを引っ張るというのが正しいやり方のようだ。
こうすれば、いとも簡単にはずすことができる。一方、ゴムを取り付けるときは、
これは意外と簡単で、ゴムの片側を固定した上で、端っこをピーっと伸ばしてとめるだけ。
このC.OVERにはこの綴じ具以外にカバーを固定するためのゴムバンドも付いてる。
C.OVERはなにかとゴムバンドが好きなようだ。せっかくのこのゴムバンドを表紙をとめておくだけではもったいないので、メモパッドの相棒であるペンをコーディネートしてみた。
■ 透明には、ラミーピコのクローム
■ グリーンに、ラミーエナジーのグリーン
■ オレンジにラミーノトのオレンジ
■ ブラックにラミースクリブル
■ ブルーにカランダッシュ849
こんな感じでカバーのカラーとペンを合わせてみるのも楽しい。これまでのメモパッドでは残りの枚数がなくなっていくと予備にもう1冊新しいものを持つということが必要だった。しかし、このC.OVERには3冊も綴じ込まれているので、そのうちの1冊を使い終われば、トコロテン式にずらして新しいものをセットするという使い方ができる。
また、順番に使っていくだけでなく、冒頭にご紹介したよく使うデータベースを、常に持ち歩くということだってできる。例えば、営業の方なら価格表などを一冊にまとめて貼ったり書いたりしておいて、必要な時に参照するというまさにシステム手帳的な使い方もできる。
ゴム方式の綴じ具の使い方には、ある程度のコツが必要ではあるが、使いこなせれば、便利な存在になりそうだ。
■ 記事作成後記
*ちなみに、このメモパッドは後半の半分だけがミシン目で切り取れるようになっているというちょっと変わったスタイルになっています。これはきっと、システム手帳のようにずっと残しておくべき情報も書きとめるという理由からなのでしょう。
*ミシン目の切り取り具合は、天下のマイクロカット加工のミシン目のロディアほどきれいにとはいきません。さながら、レジでもらうレシートみたいな切りたてホヤホヤといった感じです。
*あらかじめ付いているのは3冊とも無地。オプションのメモパッドとしては無地意外にも、罫線、方眼もあります。
*万年筆で筆記テストをしてみました。
ペリカンのロイヤルブルーとラミーのブルーはOKでしたが、それ以外のパイロット、ウォーターマン、モンブランでは裏抜けが見られました。このC.OVERには、万年筆よりもボールペンやシャープペンで書いたほうがよさそうです。
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