文具で楽しいひととき
アシュフォード
イシュー HB×WA5
HB×WA5デビューをした。
実は一冊も持っていなかった。きっかけはYouTubeで見たHB会というのであった。HBといっても鉛筆の硬度ではない。もし鉛筆のHB会というのがあったら、それはそれでぜひ行ってみたい。色々な硬度を使ってきて結局ちょうど良いHBに落ち着いているので。。その硬度の話ではない。システム手帳のHB×WA5サイズをこよなく愛する人たちの会である。アシュフォードが主導して、各地でHB会が開催されている。当初はアシュフォード(ほぼ向井さん)がグイグイと引っ張っていく形だったが、今や女性ファンのみなさんが向井さんを逆に引っ張っているように私の目には映る。それくらい盛り上がっている。
その模様をYouTubeで見ることができる。私はそれを何とはなしに見ていた。参加されている方々はほぼ女性。みなさん独自の使い方をされている。マステやシールでデコレーションされたり、中には趣味の手芸の結構立体感のある作品を貼り付けたりされている。とにかく自由で楽しそうなのである。システム手帳はリフィルを綴じるだけと思い込んでいた私の頭を大いに刺激してくれた。すっかり固定観念に縛られた私の頭をちょっときつめにマッサージしてくれたという感じである。その動画を見ていて、俄然私もやってみたくなった。コーヒーを一口飲み天井を見上げた。ちょうどその翌日は銀座 伊東屋さんで開催される「システム手帳サロン」の初日だった。決して狙ったわけではないが、条件はすっかり整えられていた。これも何かの縁なのだろう。この流れに身を任せてみるのもいいかもしれない。考えてみれば、HBデビューをする上で、これほど相応しいイベントはないだろう。コーヒーカップを力強くテーブルに置いて、静かに決心した。そして、翌日イシューのHB×WA5を買った。
◾︎ シンプルデザインのイシュー
色々なHB×WA5がある中でイシューを選んだのは、シンプルな顔立ちだったこと。ただ、コバはブルーグリーンのようなアクセントが効いている。この静かな主張も気に入った。グレーとなっているが、私の印象としてはブラウングレーっぽく見える。
一つ気になることがあった。それはベルトである。これまでバイブルサイズを中心に使ってきたが、ベルトがあるものはほとんどなかった。というのも、書こうとするときにベルトが手にあたってしまうからだ。あいにくHB×WA5の中でベルトなしというタイプはあまり選択肢がなかった。このベルトについては、自分なりの工夫で解決していくことにした。
リフィルはブルー(サックス)のドットと白の無地を買って、盛り上がり続けているシステム手帳サロン会場を静かに後にした。システム手帳サロンは私と同じように一人で来られている方が多かった。みなさん、お目当のシステム手帳がしっかり決まっているようで静かな中にも熱いものを中に秘めているのを感じた。私は言ってみれば一夜漬けでやってきたが、きっとみなさんはもっとずっと前から予習を重ねてきたのだろう。
◾︎ Material Notebookという使い方
HB会では、みなさんおもいおもいの「自分の好き」をHBの中に詰め込んでいた。それを私もやってみたかった。私の使い方は「仕事のネタ帳」だ。文具の商品企画、売り場づくり、文章を書くという仕事をしていく上での様々な素材やネタをまとめていくことにした。今の文具の仕事を始めてかれこれ17年になる。とても好きな仕事である。それを自分なりにまとめていくことに決めた。
内容は大きく2つに分かれる。1つは情報のストック、そしてもうひとつは練習帳。
◾︎ 情報のストック
普段生活していてグッとくるものに出会うことがある。雑誌の記事だったりポストカードのデザインだったり、パッケージだったり様々だ。そうしたものをイシューに貼ったりファイリングしたりしていく。クリアポケットのリフィルも買っておいたので、それに入れてみた。
クリアもいいが、曇りガラスのようなノンクリアポケットも作ってみたくなった。そこで、ストック用の紙箱をガサゴソと漁ってみた。その中にいいものがあった。日めくりカレンダーの紙を使った365notebookである。いい感じの半透明具合だ。また、両対数方眼用紙というのもあった。細かな方眼はまるでチェック柄のようである。いずれもA4サイズ。この半透明の紙でポケットリフィルを作ってみた。やり方はとても簡単。まず半分に折る。するとHBサイズの横幅にピタリとくる。HB×WA5というサイズは、H(HIGH)はバイブル、W(WIDE)はA5というサイズなのだ。縦は少し長かったので折り返した。このままパンチで穴を開ければ半透明ポケットリフィルの出来上がり。ここにお気に入りの紙を入れていく。クリアとは違うほのかに透けて見える具合もとてもいい。
タイプライターでpen-infoと打ち込んでみた
これだけも自分のHBがとても楽しいものになってきた。
ストック情報には、もうひとつある。自分で書いた文字情報である。私が書く文字は、ノートであれば「ロルバーン ランドスケープ」、メモなら「すぐログ」に記録し続けている。このスタイルは、私のもはや定番と化している。ただ、最近気になることが出てきた。書いた情報が次々に流れていってしまうのだ。ランドスケープを一冊書き終えると、全ページスキャンしてノート自体は処分してしまう。すぐログも書き終わったら直近の数冊だけ本棚に残し、残りは処分してしまう。紙としてのノートやメモを整理していく上で、この「流す」という行為を私自身とても大切にしてきた。溜めずに流すことで余計なスペースを取らずに済むからだ。
ただ日々書いている中で、これは今後の仕事のために保存しておきたいと思えるものもある。ランドスケープに書いたものなら、一応スキャンしているので、デジタル上に残っているが、玉石混合で色々な情報に埋れてしまっている。そうした自分にとってストックしておきたい大切な情報だけをすくい上げてとっておく場所が、今回のHB×WA5なのである。流しそうめんのようにどんどん流れていってしまう情報の中から必要なものだけを網ですくい上げてストックしていくイメージだ。
こうした情報を1ページ1コンテンツ、HB×WA5のリフィルに転記している。書くときに気になるのが先ほど触れたジャケットのベルトである。システム手帳を開くとベルトがビヨンと上を向いたままになる。手で押さえても離すと戻ってきてしまう。これをどうにかフラットにしたい。そこで私が使っているのが大きなクリップだ。調べてみるとミツヤの「スーパージャイアントゼム」というらしい。10cmもの長さがある、まさにジャイアント。ベルトの付け根に挟むとベルトがビシッとフラットになるのだ。これで思う存分右手を動かして書いていける。もはや誰にも止めることはできないというくらいに。
◾︎ 練習帳
自分の仕事の中で自分自身を鍛える、一歩前に進めるための練習もこのHB×WA5で行なっている。練習したいと思ったのは、文章とレイアウトである。文章はこれまで全く独学でやってきた。文具を紹介するコラムを書く上で今後取り入れてみたいことがあった。それは情景描写である。情景描写とは、小説などで登場人物が見ている光景を描写するものだ。これがあると文章にグッと奥行きが生まれる。例えば、言葉で寒いと言うよりも風で木の枝がなびいているとか、通りを歩く人たちがマフラーを何重にも巻いているなどと描写したほうがより伝ってくる。
その練習をHB×WA5でしている。これまで全くやってこなかったことなので、いざ書いてみても全然うまくいかない。手探り状態で進めるより何か参考にしようと、読んでいる本の中で素敵な情景描写があればそれを書き写しながら練習にしている。
もうひとつはレイアウト。「GRID SYSTEM」という本を読んで影響を受けた。一枚の紙を同じ大きさの四角いグリッドでスペースを保ちながら区切る。それをベースに写真のスペースやテキストのスペースを割り当てていくというデザイン手法だ。HB×WA5のリフィルに自分なりのグリッドと書いて、その上に半透明の紙(こちらはエアメール便箋で自作)をのせてレイアウト作りの練習を重ねている。
いずれも学ぶべきことが多くとても楽しい。
*
という具合に自分の仕事のネタをストックしたり練習を楽しんだりしている。こうした「ネタ」という言葉、英語でなんというか調べてみると、意外にも「Material」と出てきた。マテリアルはものを作る時の原料や材料という意味があるのは知っていた。それ以外にもうひとつ(映画や本などを作る時の)資料やネタという意味もあるらしい。なるほど映画や本の材料となるネタということなのだろう。私の仕事を今後形作ってくれるネタを集めていくということで「Material Notebook」と呼ぶことにした。
スケジュールやToDoといったやるべきことは一切なく、ただただ自分の好きなものをひとつずつ入れていくだけ。HB×WA5の広々としたサイズは、自由さがあって自分の好みを思う存分詰め込められるちょうど良い懐の深さがある。
アシュフォード イシュー HB×WA5 グレー 16,000円+Tax
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