文具で楽しいひととき
ヴァルドマン
ヴィエナ
スターリングシルバーのペンを90年にわたり作り続けているドイツのペンブランド「ヴァルドマン」。シルバーを使ったペンは数あれどヴァルドマンがこだわっているのは、彫金の施したペンであるということ。ヴァルドマンが本拠を置くシュヴァルツヴァルドからほど近いフォルツハイムは、ドイツでも屈指の彫金の街として、古くから知られている。
その地で三代にわたり彫金を続けているマイスターのグニカさん。昔は、こうした彫金師の人たちはたくさんいたが、大量生産の流れで今ではすっかりその数も少なくなってしまった。ヴァルドマンがこのグニカさんにオーダーして作ってるのが、ヴィエナというシリーズ。
■ ペンにちりばめられた美しい彫金
これまではブラックボディに彫金したものだったが、このたびソリッド感あふれるシルバータイプが加わった。
シルバーボディの全面には、平な面はもうないのでは、というくらいにびっしりと彫金で埋め尽くされている。
これまでのブラックタイプとほぼ同じ模様になっているが、こうして全面シルバーだと全く違った印象を受ける。一見すると不規則に彫られているようだが、ルーペを使ってじっくりとその柄を目で追っていくと、ある決まったパターンになっているのがわかる。
柄は大きく彫られたものと、蔦のようにクルッと巻いた曲線の二つでもって構成されている。蔦の様な曲線を目を凝らして見てみると、線に見えたそれは、なんと細かな点の集合体で作られていた。
■ キラキラとザラザラ
一本の曲線を描くためには、ミリ単位で少しずつずらして何十回も細かく彫っていかねばならない。しかも、この曲線は一本のペンにざっと6本くらいはある。当然、失敗は許されない。全く気が遠くなるような緻密な作業だ。こうして彫られた部分以外に、所々細かなやすりのようなザラザラとした加工も見られる。
これはブラックタイプにはなかったものだ。すべてを鏡面仕上げにしてしまうと、キラキラし過ぎてしまうという理由からかもしれない。大きく彫られたところは、ひときわ輝きを放つ。そのまわりにマットな部分があることで、陰影が生まれて、輝きがより強調されている。
この柄はグルカ家に代々伝わるサンプル帳の中の一つ。そのサンプル帳には、どの柄をはじめに彫っていくかが詳細わたって解説されている。ペンを分解してみると、驚いたことにボディの厚みはわずかコンマ数ミリしかなかった。
ボディ表面から見ていた時は、ひと彫りひと彫りが、結構凹凸たっぷりに見えていたが、実はそれほど深くはなかったのだ。力加減を常に一定にして、こんな薄いところに彫っていくというのは並大抵のことではない。手にすると、その一つ一つの彫りが指先からもしっかりと伝わってくる。
先程のザラザラとした部分が、グリップにもうまい具合に貢献してくれる。落ち着いた輝きを目で楽しみ同時に職人技の彫金を指先でも味わうことができる。スターリングシルバーなので、次第に黒ずみも現れるだろう。こうした彫金の部分はいったいどんな黒ずみをみせてくるのだろうか。これをもまた使っていく楽しみとなる。
□ 記事作成後記
今回の文様はドイツに古くから伝わるものということですが、どことなく、懐かしさを感じるのは私だけでしょうか。日本の唐草模様にもどこか似ているような気がします。
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