文具で楽しいひととき
ISOT2008
国際 文具・紙製品展レポート
今年で18回目を迎えるISOT2008(国際文具・紙製品展)。
ここ数年のISOTを見ていて感じるのは商談展の色合いがとても強くなってきていること。例えば、会期がそう。これまでは木、金、土だったのが、水、木、金という具合に平日のみの開催になって土曜日がなくなっている。やはりそのせいか会場にはスーツ姿の人たちが目立っていた。
ということで、ユーザーの方々の間では、ISOTに行けなくなってしまったという方も多いのでは。。。そんな方のために、ISOTレポートをお届けしようと思う。たくさん出展していたブースから個人的に気になった7社をピックアップしてみた。
■ 新しいデザインノートを提案していたハイタイド
ハイタイドと言うと、ダイアリーのイメージがとても強い。今回はダイアリーは、ひとつも展示されておらず、その代わりに新作のノートがずらりと並んでいた。
これまで私自身たくさんのノートを見てきたが、そんな中でも、今回のものはおもわず手に取ってみたくなる不思議な魅力を持ったものだった。その名も「Notes Flagship Model (ノーツフラッグシップモデル)」。
このノートは30年にわたってステーショナリーを専門に手がけてきたデザイナーの窪田氏とハイタイドとのコラボレーションによって生まれたものだ。
ノートの顔となる表紙は、全部で18種類。どの表紙もこれまでのノートにはない独特なものになっている。しかし、どこかで見たこともあるような印象を受ける。その中のひとつ、色鮮やかで大胆な構図のデザインは、実は、船が航海する時に使う信号旗をモチーフにしたものだ。
どおりでどこかで見たように思えたはずだ。視認性のいい構図とシンプルなデザインもこうしてノートになってみると不思議としっくりと来る。この信号旗デザインの他にも「スパタ」という柄もあった。スパタとは、「泥はね」のような模様と言われるそうだ。
どことなく懐かしさを誘うデザインになっているそれもそのはずアンティークホーロー製品に使われてきたという。確かにヤカンでこの柄を見た記憶がある。ノートの種類は、B5、A5の製本シールを貼ったものと、糸綴じノートを3冊セットにしたパックノート、そしてA5サイズのツインリングタイプという4種類。
裏表紙の内側には、横から差し込めるポケットがついている。マチはないが、ちょっとしたメモなどを入れておく時に役立ちそうだ。
ノートなので、やはりその紙質についても気になるところだ。今回のこのノートには 「書籍用紙」というものが使われている。「書籍用紙」は、その名前のとおり、もともとは本のために作られた紙である。この紙の特徴は、やはり本のための紙ということで、しなやかなめくりやすさ、目に優しいクリーム色、そして一枚1枚の紙のボリューム感という点があげられる。
では書き味はどうなのか。特別に数枚この紙を頂いて、愛用の万年筆で筆記テストを行ったみた。
思ったより、と言ったら怒られそうだが、書き味は柔らかさに満ち、インクのにじみもなく、書いたままの筆跡がそのまま残せる。
裏面をめくっても抜けも見られない。
そもそも紙には、筆記のための紙と、印刷のための紙とに大きく分けられる。ノートには一般的に筆記用紙が使われることが多い。書籍用紙は筆記のためではなく、印刷のための紙であるはずなのにこの書き味は正直ちょっと意外だった。ちなみにこの紙は王子製紙の「OKサワークリーム」(60g/平方m)。
ブースの中央には、BIC商品がいくつも並べられていた。
いつものBICと違うのは、ペンだけでなくノートなどのペーパープロダクトもあることだ。これらは、BICジャパンとハイタイドによるコラボ商品。メモパッドやノートをはじめ、それぞれのカバー、さらにはボックスに入った付箋など幅広い商品ラインナップが揃っている。
そして、BICファンにはたまらないユニークなアイテムもあった。ちなみにこちらは、ハイタイドとのコラボではなく、BICのオリジナル商品。
BICボールペン専用のホルダーだ。その名もホルダーペン。
ホルダーと言えば、一般には書いていくうち短くなる鉛筆のためのものである。なにゆえボールペンのホルダーなのか。
きっと皆さんもそう思われたことだろう。ブースのスタッフの方にその疑問を投げかけてみた。
「BICはこれまで使い捨てのボールペンを作り続けてきました。使い捨てではないボールペンは作れないだろうかと考え、今回のホルダー使うというアイデアに行き着きました。ホルダーを使うことでボールペンをリフィルのようにして使い続けることができます。」
リフィルというと、ボールペンの中の芯を入れかえるものだが、これはボールペンそのものがリフィルになってしまうその逆転の発想が面白い。
■ 歴史の積み重ねをアピールしたデザインフィル
デザインフィルのブースは、まるでテーマパークのアトラクションのような入り口が用意されていた。
その入り口を入ったトンネルのような通路には、これまでのミドリブランドで送り出してきたヒット商品の数々が展示されていた。その中で、これもミドリだったのかと思ったのが「デコシール」。40歳代の方々ならきっと子供時代に見たことがあるのではないだろうか。
デコシールはデコレーションシールのこと。このサイケデリックな花のシールは、当時我が家の冷蔵庫にも貼ってあったのを今でもはっきりと記憶している。そして、ご同輩の方々には、きっとこの「グルービーケース」も懐かしいのでは。。。
ご存じないお若い方のためにご説明すると、これは 「勉強道具」を入れるボックススタイルのかばん。
私はこれを愛用していたが、「グルービーケース」という商品名だったとは今のいままで知らなかった。私はこれを携えて、小学生時代によく塾に通っていたものだ。子供心に塾に行くのは正直つまらなかったが、このボックスを持っていくのが楽しくて、どうにか塾通いするモチベーションを保っていた。文具でやる気を起こすということを、どうやら私はこの頃から始めていたようだ。
ブースの中では、デザインフィル恒例の社内デザインコンペが今年も行われていた。今回のテーマは、同社の中でもロングセラーを誇る「ダイヤメモ(M)」。
ダイヤメモは、リング式のメモパッドの定番的存在。1961年から発売が開始され、当時のデザインのまま今なお販売され続けている。1960年代当時、国内のものとしては、こうしたメモパッドはまだ存在しなかった。
そんな中発売されたこのダイヤメモは、日本人の手に、そしてシャツのポケットにもちょうどよいサイズが支持され、ビジネスマンの必須アイテムとして一躍人気商品へと成長していった。
1960年代と言えば、折しも日本は経済成長のまっただ中。日本の成長を影で支えてきたメモパッドとも言えるのかも知れない。今回のコンペでは、そのダイヤメモがこんなにも七変化するものかと思ってしまう程ユニークな作品が並んでいた。
その中で、私が実際に投票した3作品をご紹介しよう。一つ目は「ジョッターダイヤメモ」。
革で作られたジョッター。ジョッターとは、表紙のないメモパッドの台紙のようなもの。ダイヤメモだけでなく、ミニペンもセットできるようになっている。しかも、ストラップを付けるフックまであるので、首からさげて使うこともできるという機能性がいい。
こうして革と組み合わせると、ダイヤメモも一気に若々しさが出てくる。どことなく「トラベラーズノート」の弟分のようにも見えなくもない。
作者の名前には、「トラベラーズノート」の企画者である飯島さんのお名前があった。なるほど。。。作り手の個性というものは自ずと商品からにじみ出てくるということなのだろう。このジョッター、商品化したら、きっと売れるのではないかと思う。
二つ目は、「USBフラッシュメモ」。
今やペンなどにも搭載されている USB メモリー。そのUSBメモリを紙のメモであるダイヤメメモにくっつけてしまったというもの。ご丁寧に128MB、1GBなども揃っている。であれば、それにあわせてメモの枚数も増やせばいいのでは、なんて、お節介なことを考えてしまった。さすがに実用化は?だが、何といっても、アイデアが面白い。
三つ目は、表紙が名刺になっている「名刺メモ」。
名刺は切り取って実際に使えるようになっている。自分の名刺なら自分だけのダイヤメモになり、万が一名刺を忘れてもここから切り取って使うこともできる。名刺を切り取ってしまうと、表紙の役目が果たせなくなってしまう。しかし、切り取った状態がちょうど窓枠のようになるので、開かなくても中が見えるというのもメリットと言えるのでは。。
この他にも活版印刷を使ったもの、5冊を横につなげてミシン目で切り離すもの、などなど採算や商品化の技術的問題を度外視して作られているものも多かった。そうした自由度がかえって意外性を生み出しているようで実に面白い。
このコンペでは、あのトラベラーズが商品化されたという実績があるので、今後が楽しみだ。
そして、今後実際に新商品として発売されるものももちろんしっかりと発表されていた。そのひとつが、「 MDノート ダイアリー」。
これはすでに発売されている「MDノート」のスケジュール帳バージョンだ。中のスケジュール覧は基本マンスリーカレンダーになっている。そのカレンダーに大きな特徴がある。カレンダーの外側の線がなく、余白がたっぷりと設けらているのだ。
マンスリーカレンダーは、1ヶ月のスケジュールが見渡せると言う一覧性は良いものの、筆記スペースがあまりないという弱点があった。その弱点を美しく解決してくれている。マンスリーダイアリー愛用者の一人として、とても気になる商品だった。
また、カレンダーの他に見開きで8分割された罫線ノートも備わっている。この8分割というのがポイントで日付を入れれば、見開きで1週間のスケジュール覧としても活用できる。それを想定して、1年分(52週)がたっぷりと書けるだけのページ数になっている。もちろん、ノートとして使ってもいい。
また、このMDノートシリーズで「MD日記」というものも発表されていた。
まるで本のようなハードカバーで、中はすべて無地ノートになっている。その無地ノートのために、方眼の下敷きが付属されている。この下敷きはユポ紙という合成紙で作られており、使い込んでもへたれることがない。面白いのは片面が一般的な5ミリ方眼なのに対して、裏面は12ミリという、ちょっと変わったサイズの方眼になっていたことだ。
このやや大きめな方眼は、太めの万年筆で書くためのもの。日記としてだけでなく、手帳としても使えそうだ。
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