■ 「ノートで自己主張を愉しむ」 Paperblanks (ペーパーブランクス)
□今、ヨーロッパや北米で人気を集めているノートがある。
その名は、「Paperblanks」。
この7月からいよいよ日本でも発売が開始されることになった。
発売を前に、このPaperblanksのノートを試させていただく機会を得た。
実に語りどころが多いこのノートブックの全貌をたっぷりとご紹介したいと思う。
□Paperblanksのメーカー、ハートレー&マークス社は、
もともとカナダ バンクーバーに本拠を置く、出版社である。
「Paperblanks」とは「何も書かれていない紙」という意味。
ノートはそもそも何も書かれていないものなのだが、
あえてこう呼んでいるのは、本の様なしっかりとしたつくりを保ちながら
違うのは、ただ中に何も書かれていないだけであるということを
強調したかったからではないかと思う。
確かに、本を知り尽くした出版社ならではの細かなこだわりがちりばめられている。
□このPaperblanksの特徴は、
まず何と言っても、豊富な表紙デザインが用意されていることだ。
今回、日本で発売されるだけでも、
24シリーズ、80種類以上にも及ぶ。
豊富なのは、表紙のデザインだけだではない。
ノートのサイズも一番小さい「ミニ」から
机の上でどっしりと使うような「プロフェッショナル」まで
全部で8種類から選べるようになっている。
□こうした豊富な表紙デザインの中で、個人的に最も惹かれたのが、
「アンティークレザースタイル コレクション」。
新品なのに、すでに使い込まれた風合いがあり、
まるで、ひと時代を経てきた洋書といった感じだ。
レザーという名が付いているが、本物の革ではなく、
レザーの風合いをもった特殊な紙が使われている。
紙と言っても、いわゆる普通の紙とは違う。
特殊なコーティングがされていて、なめらかな触り心地がある。
ちょうど、重厚な百科事典や辞書の装丁をイメージしていただくと近いと思う。
紙の表紙ということで、気になるのはその耐久性。
実際に1年以上使い込んだものを見せてもらったが、
傷みなどはほとんどなく、耐久性は十分。
むしろ、いい味わいが増していた。
□うってかわって、華やかな「フレンチシルク コレクション」というシリーズでは、
シルクロードが栄えた時代にフランスで流行した模様が全面にちりばめられている。
やや光沢のある質感になっていて、光を受けるとやわらかく反射する。
こちらも紙製というから驚きだ。
一見すると、女性向けのデザインかなと思ってしまうが、
クラシカルな模様なので、男性が持ってもさまになると思う。
□「アーティストビジョン コレクション」は、先ほどのアンティークレザーと同じ素材が
使われており、表紙には、レンブラント、フロイト、シェイクスピア、ゴッホ、モーツァルトなどの
直筆の文字がそれぞれ刻みこまれている。
文字は刻印されたように凹凸があって、まるで、肉筆のような迫力がある。
その他、花をモチーフにしたフレンチフローラル、
ジュエリーをあしらったスタイルのジュエリーボックスなど
全くタイプの違うデザインがたくさん揃っている。
そのどれもに共通しているのが、いい顔(表紙)をしているという点だ。
本づくりで培ってきた装丁の技術が活かされているのだろう。
そうした「いい顔」に大きく貢献しているのが、彫りの深さだ。
先ほどのアーティストの直筆文字でもそうだったが、
どの表紙もデザインが浮き上がった作りになっている。
手にすると、そうした模様のひとつひとつが、指先からしっかりと伝わってくる。
ノートは手にすることが多いので、こうした手で味わう満足感と言うものも
とても大事な要素だ。
□Paperblanksには、
きっと誰しもが感じるであろう、とっておきの楽しさがある。
それは、マグネット式カバーの開け閉めだ。
Paperblanksのノートのほとんどは、表紙がマグネットで
とめられるようになっている。
このマグネット式カバーには、
裏表紙が表紙まで長くなってカバーするタイプと
ベルト式になっているものの2種類がある。
なにより、私が気に入ってしまったのは、
このマグネットが合わさる時の「パタン。。」という心地よい音。
ゴムバンドでとめるタイプとはまた違った楽しさがある。
ゴムバンドと違いマグネットならではの利点としては、
ノートをとじるとその勢いで、自然にマグネットが引き寄せられパタンとくっついてくれる。
ノートの開け閉めを頻繁に行う人には、便利な機能になるはずだ。
□このマグネット式カバーを使った私流のちょっとした裏ワザをご紹介しよう。
この部分にペンを差すことができるのだ。
ベルト式の時は、ペンを内側に抱きかかえるようにすると
うまい具合にペンがしっかりと固定できる。
また、裏表紙のカバータイプはペンを外側にしてクリップをさすといい。
これまでのこうしたハードカバー系のノートでは、
どうしてもペンのセットが思うようにいかず、
別々に持たざるを得なかった。
なので、これは個人的にとてもうれしい発見だった。
□表紙を開くと、中は目に優しいクリーム色の紙になっている。
ノートの紙面は、横罫線と無地の2種類。
同社では、環境への配慮をとても大切に考えてノート作りを行っている。
特に環境に影響のある木材パルプを使った紙においては、
持続可能に維持できるよう、管理された森林のものだけを
使っているという。ある意味、ロハスなノートとも言えるかもしれない。
高い保存性を誇る中性紙を使い、
すの目(レイド)模様の透かしまで入っているこだわりも忘れない。
□ページを開いて気づくのは、見開き性の良さ。
「スマイス式綴じ」と呼ばれる、いわゆる糸綴じ製本が採用されている。
スマイスとは、その昔ハンドメイド糸綴じから、機械による糸綴じに成功した
企業で、その社名に敬意を表して名づけられている。
このスマイス綴じがじっくりと拝めるようになっているノートがある。
「オープンスパイン」というシリーズで、
大胆にも背表紙がなく、糸綴じがあらわになっている。
この見開き性がまた格別。
背表紙がないことで、どのページでも、
ほぼフラットに広げることができる。
これだけ気持ちよく開いてくれれば、
筆記スペースとして綴じ部分ギリギリまで使えるし、
ペンを持った手をノートにのせた時の段差がないので、
まるで一枚の紙に書いているような心地よさも味わえる。
□以上、ブランクノートについてご紹介してきた訳だが、
実は、2008年版の「デイプランナー」(スケジュール帳)も追って発売されるそうだ。
こうした海外ノートブランドのスケジュール帳が発売されること自体
特に珍しいことではない。
しかし、私が驚いてしまったのは、
徹底した日本仕様化が図られていることだ。
ある意味、日本の手帳より日本らしいとも言えるくらいである。
日本の祝祭日はもちろんのこと、
時候の挨拶文例集、JAL、ANA、VISAカードといった電話番号リスト、
そして、極めつけは
東京、大阪などの主要都市の地下鉄マップまで付いている。
スケジュール欄は、ウィークリータイプをメインに
年間、月間カレンダーもついているというベーシックなスタイル。
これまでは、海外デザインのスケジュール帳を楽しむという時には、
それと引き換えに
英語版を使わざるを得ないケースが多かった。
しかし、
これなら、デザインを楽しみつつ、実用的にもしっかりと使えるのがいい。
□これまでの自分のノート選びを振り返ってみると、
ブラック系を中心としたシックなトーンのものを選ぶことが多かったように思う。
でも、今回、Paperblanksの豊富なデザインバリエーションを目の当たりにして、
その認識がじわりじわりと変わってきた。
ノートもペンと同じように自己主張、自己表現の手段として考えていいものだと。
Paperblanksは、そうした新しいノートの楽しみ方を示してくれているように思う。
(2007年7月3日作成)
* 追記 2008年4月1日
私の持っている万年筆で書いてみましたが、にじみが出てしまいました。
万年筆での筆記はあまり馴染まないような印象を受けました。
■ 各種ペーパーブランクスは、こちらで販売されています。
■ 関連リンク
■ 「 MADE IN THE U.S.A. のノート」 FIELD NOTES COUNTY FAIR
■ 「保管のことまで考えたノート」 MUCU DEPOT
■ 「見ていると吸い込まれそうになってくる」 アサヒヤ紙文具店 クイールノート マーブル
■ 「万年筆のための手帳」 アサヒヤ紙文具店 クイールノート
■ 「所有する喜びが感じられる手帳」 MOLESKINE ポケット ルールドノート